閉じる

研修に参加しました(2)

とにかく、トークが上手い。中村伸一Drは人口約3千人の名田庄地区の診療所長として奮闘されています。H21には、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組に取り上げられたこともあり、「神の手」系医師とはまた違う、望まれる医療の担い手である「総合医」として話題を呼びました。

名田庄地区は多世代同居率が非常に高く、「絆」が深い地域だそうです。自治医大を卒業して3年目に赴任し、その魅力に取りつかれ、48歳の現在に至るまでただ1人の医師として奮闘。最初は自分がこの地域を支えていくんだ、という思いが地域の人たちとの様々な関わりのなかで、いつしか自分が地域に支えられていることに気付いたそうです。
この地域は、高齢化率が30%を超える中、「家で最期を迎えたい」という高齢者がほとんどであり、先生もこの思いに応えようと、保険・医療・福祉のネットワークづくりに奔走してきました。
デイサービスがスタートした経緯が面白い。役場の住民福祉課長がH3に福祉バスをゲットしたから何か利用方法を考えてよ、と先生のところに話を持ち込んできたそうです。ふつうは、必要性を考えてから購入するものですが、逆です。そこで先生を中心に、役場、社協などがメンバーとなって会を結成し、そのなかで「バス(Bus)を買っちゃったからバス(Bath)に入れよう」と始めたのがデイサービスだそうです。
先生は、ユーモアたっぷりに「できちゃった婚」ならぬ「買っちゃったデイサービス」と言っておられました。

これをきっかけに、在宅ケアを実現するためにいろいろな事業を展開、H11には、国保診療所と国保総合保健施設が一体化した「あっとほ~むいきいき館」を開設し、地域を支える基盤を整備しました。
その結果、在宅医療から最後は看取りまで、地域のニーズに見事に応えて今日まで至っています。

先生がこの地域になぜここまでこだわるか、について実に感動的な逸話を話してくれました。
若いころに一度「非典型症状のクモ膜下出血」を見逃すということがあったそうです。なんせ、致死率50%の重篤な病気です。通常の症例だと突然の激痛から意識を失い、手の施しようがなく亡くなってしまうそうですが、こうした典型的症状を示さない症例もあり、見逃してしまった。しかし、親族から「忙しいなかで深夜に呼び出して往診をお願いしてかえってすまなかった。見間違いなんて誰しもあるもの」と責めるどころか、かえって励ましの言葉をかけてくれたそうです。このことが原点になったとしみじみ述懐してました。
また、H15に自分が頭の病気で2ヶ月間診療所を休んだ時、先生に負担をかけまいと、誰が言い出したわけでもなく、コンビニ受診を控えるようになったと言います。

先生は、最期を自宅で送られた6人の症例を紹介し、人生の最終章を本人が納得する形で送れるよう支援したことを通じて、医療の在り方として、患者側と医療者側とが相互不信ではなく、「お互い様」の心を持った相互信頼が重要、と締めくくられました。

今日は久しぶりに「人」に会えた。2人の先生とも「地域」に対して自分が支える「主体者」になろうという熱いハートをもった方だ。立場やステージは違うが、その思いは自分に通じるものがある。今日の研修でまたエンパワーしていただいたと帰りのあずさの中で振り返りました。