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減点主義からの転換を

先日出会った本に「はやぶさプロジェクトマネージャー」の川口淳一郎先生の「はやぶさ式子育て法」「はやぶさ式思考法」がある。小惑星「イトカワ」から7年の歳月をかけて帰還した、あの「はやぶさ」プロジェクトの中心者である。

そこには、「減点法をやめて加点法にしよう」という「はやぶさ」成功の底流にある基本的思想が展開されている。40代初めからずっと自分の心に渦巻いていた「この国はいつから減点主義中心の社会になってしまったのか?」という疑問に見事に答えている。
日本人は何かを評価するとき、100点を満点とする方法をとりがちである。ここから、ミスをした分を差し引いていく、すなわち減点である。わかりやすい、評価基準が設定しやすい評価方法だが、100点以上とれる人が何人もいる場合、一律百点で同じ評価となってしまう。

こうなると、人は100点しか目指さなくなる。往々にして試験に出そうなところしか勉強しなくなり、それ以外はムダと考えるようになる。努力すればもっと伸びる可能性を摘んでしまうのではないか。だからミスばかりをマイナスカウントするのではなく、成功あるいは良い点をプラスカウントするような評価方法、すなわち加点法をもっと取り入れよ、というものである。さすがに幾多の困難を乗り越えて「はやぶさ」を帰還させた中心者の言葉だ。

減点主義社会では、とにかく失敗しないように、ということを行動原理におきがちである。おそらく功績をあげても、やって当たり前とか正当な評価を与えられないために、次第に挑戦しようという意欲もしぼんできて、こじんまりと守りにはいってしまうのではないか。私がかって属していた公務員の世界は、その顕著な例だと感じている。
たぶん、減点の基準は作りやすいが、加点の基準は何をもって良とするかがわからないためだと考えられる。おそらくこれは、確固とした哲学が不在であることに因がある。

こうした社会では、欠点の多い者を切り捨て、結果として同じような人間ばかり集まる、集団の均質性に固執するあまり、没個性的な面白くもない集団が出来上がる危険性をはらんでいる。今の閉塞感漂う日本の現状は、この減点主義に遠因があるのではないかという思いが日増しに強くなっている。先日記した「ソーシャル・インクルージョン」の考え方と対局にあるのが減点主義社会といえる。

欠点を見つけて叱ることばかり考えないで、長所を見つけてほめる。これも加点法的思考だ。
今必要なのは、減点主義的な考え方から、よいところを見つけ出してほめ、励ましていく(エンカレッジ)文化への転換ではないかと思う。