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Fearの共有

昨日のニュースで、厚生労働省の医療保険部会は、70歳~74歳の医療費窓口負担について、現在特例で1割負担となっているものを「世代間の公平の観点から法律上の2割に早急に戻すべきとの意見が多数」とする議論をとりまとめたそうである。これに対して厚生労働大臣は、1割負担を継続すべく、補正予算で必要経費を計上する、と表明している。

この問題は、2006年に「2割負担」とする法改正を行うも、医療ニーズが高い70歳以上の高齢者の実情を考慮して「特例」で1割据え置きにしてきたものである。まさに「いのちをつなぐセーフティネット」として多くの高齢者を守ってきた点で大きな意義のある制度である。

増え続ける高齢者に比例して医療費も増え続ける中、一時期、病院の待合室を「高齢者のサロン」と揶揄する声も耳にした。こうした声はまた、受診の必要性に疑問を投げかけてもいる。なかには、受診よりも病院の待合室での知人との時間の共有こそが実態ではないか、というものもある。

しかしながら、病院の待合室で知り合う高齢者の姿からは、ポール・サイモンの名曲「Old Friend」の一節にある「Silently sharing the same fear」の状態もみてとれる。つまり、残りの人生が時間的に限られている中、「同じ恐れ」(=死)を共有しあう空間として、病院がよりどころとなっている。そこには同じ悩みを抱えるもの同士という「連帯感」があり、ここに足を運ぶということが生きるエネルギーとなっているのではないか?であるならば、一概に「世代間の負担の公平」という一遍の理屈だけでは片づけられない、大きな課題が2割負担に戻すということには存在する。

医療費が増大するのは、医療が必要だからである。抵抗力が次第に低下する高齢世代にとって、ちょっとした風邪であっても放置することによって重篤化することもある。医療費負担増が高齢者に与える心理的圧迫は計り知れないものと考える。だから、厚労大臣の英断にはエールを送りたい。

この国の動きは、昨年12月の甲府市の老齢者医療費助成制度の廃止の一つの論拠となっていた「国が70歳~74歳を2割に戻すから」というものが崩れたことを意味する。

「セーフティネット」を安易に廃止するのは、やはり賛成しかねる。特に高齢者の抱く「Fear」を共有すればなおさらのことである。