甲府市議会3月定例会は15日本会議を開き、24年度補正予算や請願など、25年度当初予算を除く案件について、常任委員会委員長報告のあと採決を行った。
このうち、無料・低額診療事業の拡大を求める請願については、委員会で対応が分かれ、我が会派は審議する時間をかけるべきとして継続審査を提案したが否決され、多数決で不採択の委員会採決結果となった。
無料・低額診療事業は、医療費の支払いが困難な低所得者に対して、無料または低額な医療を提供する制度で、社会福祉法の第2種社会福祉事業として都道府県知事に届け出て認可を受けた医療機関が実施する事業である。
経済的理由で医療機関にかかることをためらいがちな低所得者に対する支援制度であるが、院外処方の薬代については対象外となっている。すなわち、病院内に設置されている薬局での薬代は無料・低額診療事業に含まれるが、病院外の薬局での薬代については対象外となるため、せっかく医療費が低額であっても、薬代は安くならないという状態になっている。
薬代はけっこうばかにならない。1回の受診では、診察代より高いのがふつうである。しかも最近は「医薬分業」が進み、薬は院外処方で自宅近くの薬局や、ドラッグストアで手に入れるのが通常である。しかし、院外だと無料・低額診療事業の対象外であるため、結局低所得者には痛手である。
今回出された請願はこうした不都合を是正してほしい、という趣旨のものであった。要請事項は、①薬代まで事業の対象に含まれるよう制度を拡充することを求める意見書を議会として国に提出してほしい、ということに加えて、②制度が改善されるまでの間、市で助成してほしい、という2点である。
しかし、①の点については是認できるものの、②については国がすべきことを財政力が脆弱な地方自治体に肩代わりさせる結果となり、賛成できない。しかも国の制度にないことを自治体が独自で行うと必ずと言っていいほど、交付税その他で国から不利益措置を受けるため、もろ手を挙げて賛成というわけにはいかない。こうした論点があることから、時間をかけて議論すべきとして、委員会で継続審査の提案をしたものである。
しかし、委員会ではこの提案は通らず、結局、採決に持ち込まれ、不採択とすべし、という意見が多数を占めた。最終結論は本会議での採決となるが、本会議での採決は、採択か不採択かの2者択一であり、われわれのように部分的に賛成という選択肢はない。そのため、やむをえず採決時に「退席」という選択をした。すなわち、賛否を留保したものである。
議会での「表決」は議員にとって重要な態度表明の行為であり、なぜ賛成あるいは反対したのかについて説明責任がある。賛成できるものは賛成票を投じるし、反対の場合は反対票を投じる。そこに市民から説明を求められた場合、責任をもって答えられるようにしておくのは、基本中の基本である。
しかし、賛成でも反対でもない場合はどうするか。選択肢がない以上は「退席」しかとるべき道はない。今回はこうした事情から市議会でも最近ではあまり例のない「退席」の選択をした。低所得者への配慮という点からは、市独自の助成制度の創設ということも一つの選択肢である。が国と地方自治体の責任分担から言えば、国がやるべきことを財政力の弱い自治体がやるべきではない。社会保障制度の充実を議論している「国民会議」でしっかりと議論すべき事柄である。
わが会派が退席したとき、議場にはどよめきが起こっていた。しかし、こうした行動を積み重ねて、議会がより活性化し、一層市民のための議論が進むようしっかりと取り組んでいこうと思っている。