時事通信社の情報サイト「iJAMP」ニュースによれば、10日宮島甲府市長は定例記者会見で、国が7月実施を求めている地方公務員の給与削減について、「自分のところは自分で決める。国に準じたり、(国の要請に応じる形で組合に提案した)山梨県と同じように削減に踏み切るつもりは今のところない」と述べたそうである。
この問題は、以前にも記したが、現下の厳しい財政環境のなか、国家公務員が給与削減を実行したことに準じ、地方にも同様の給与削減を求め、地方交付税を削減することにより、その実効性を担保しようとしたことに端を発している。
当然ながら、地方は猛反発し、交付税削減まで持ち出すことに対し、地方分権の流れに逆行するもので到底認められない、と中核市市長会などから痛烈に批判されている状況にある。
マスコミ報道などからは、この問題の本質が正しく伝わっていないように思えるため、整理してみたい。この時期に地方公務員の給与を一律に平均7.8%削減させようとしていることについては、地方の立場からは次のような問題点が指摘される。
まず第1に、地方はすでに10年以上前から、行財政改革大綱等を策定し、毎年、定数削減や給料表の見直しなどによる「血のにじむような」人件費削減の努力を行ってきており、こうした努力を全く顧みていない。
第2に、地方交付税は地方固有の財源であり、国が一方的に削減することは財政力が弱い自治体をさらに貧しくし、大都市との間の財政格差が拡大する一方となる。
第3に地方都市では、公務員の給与水準がその地域の民間企業の給与水準の参考指標となっている実態があり、公務員の給与引き下げは民間の給与アップを阻む要因となりかねず、地方経済に悪影響を与える。
第4に、職員の生活設計を大きく狂わせ、特に若い世代にとっては家庭や子どもをもちたくても経済的な理由から断念する傾向が強まることが懸念され、少子化に拍車がかかる恐れがある。
第5に当然のことながら、これまで消費性向をリードしてきた公務員が消費を手控えることにより、消費が冷え込みこの点からも地方経済の疲弊が進む。特に県都甲府市では、官公庁のボーナス期には必ずニュース報道で取り上げられ、流通業界、サービス業などは大いに活気づく状況がある。
こうした弊害が指摘されている地方公務員の給与削減について、宮島市長は甲府市全体の利益を熟慮の上、あえてこのような発言に踏み切ったものと思う。単に職員の士気の低下を防ぐという目的ばかりではなく、せっかく新庁舎が中心市街地にリニューアルオープンし、昨年から市の顔である中心市街地のより一層の活性化を目指して、議論がすすんでいるこの状況下で、ムードが上向きつつある地域経済を再度しぼませるような決定はできない、とおそらく憤りを抑えながら言ったものと私は推察する。
市長のこの勇気ある発言に、素直に感動しシンパシーを覚える。地方公務員が地方経済の大きな支え手であることはまぎれもない事実である。現在の彼らの給与水準は相次ぐ行財政改革の洗礼を受けて決して高い水準にあるとは言い難い。しかも定数削減により一人の職員の担う仕事の量は増える一方である。
地方の事情を顧みることなく一律に給与削減を行うことについては、やはり大きなマイナスがある。常に思うことだが、「制度」というのは、それが適用される現場の声に耳を傾けなければ、単なる空理に終わってしまう。市長の発言からは、このようなやむにやまれぬ心情が伝わってくる気がする。