10月25日午前、視察最終日は草津市の隣、栗東市を訪問した。テーマは市民参画と協働によるまちづくり推進条例についてである。
栗東市と聞くと新幹線新駅の着工後に、建設凍結派の知事当選により新駅建設が中止されたことを思い出す。当時は大きな社会的関心を呼んだ問題であり、建設に向けて周辺の基盤整備等が進んだ時点で突然建設中止となったことによる混乱を指摘する意見もあったなかで建設凍結派が勝利した形となった。
今回はその地元の栗東市の視察である。過去に思いを巡らせながら、市民参画と協働のまちづくりについての説明を伺った。
条例は、市民参画という側面と協働によるまちづくりという2つの側面から規定している。特に目を引いたのは、「地域コミュニティ団体」をプレーヤーとしてその役割を明文化している点である。
すなわち、「地域コミュニティ団体は、それぞれの地域が目指す地域社会の実現に向けて、身近な課題の解決等自主的な活動を推進し、住みよい地域づくりに努め」るものとされている。
こうしたまちづくり条例は通常、行政、市民、事業者の役割を規定することはあっても、地域コミュニティを規定する例はあまりない。まちづくりの一番身近な担い手としてストレートに自治会等の地域コミュニティ団体を明確に位置づけした点は、地域活動こそが重要と宣言するものであり、共感できる内容である。
条例で規定する2大柱のうち「市民参画」の側面は、市で行う重要な政策決定の際には、事前に市民を必ず参画させる内容であり、長期計画や市政の基本的方針を定める条例の制定などについて必ず市民参画の手続きを経たうえで決定するとされている。いわば住民自治による政策決定である。
一方の協働によるまちづくりの分野は、協働事業の提案という形で具体化している。
これまでの行政が決定した事業のいわば一方通行的な展開だけでなく、市民の側からの事業提案により協働して事業執行を行うもので、「双方向的」な事業展開である。事業効果の受け手である市民の側からの提案を求めることにより、現場の事情に即した事業執行を可能とするものである。そこには、事業決定時にすでに「市民満足度」をあらかじめ図るという狙いがある。
提案事業は、市民側が自由にテーマを決めて提案するものと、行政が設定したテーマに沿って提案するものとの2つのタイプを用意している。いずれにしても提案する側と提案を受ける側とのしっかりした「協働」により事業を行うものであり、栗東モデルというべきものと評価したい。
今回視察した3市いずれも真摯に市の実情を考え、知恵を絞って独自のまちづくりの方向を模索しており、他市の事例を参考にしつつも、自分たちのまちは自分たちの手で、というフロンティアスピリットあふれる取り組みを行っている。リニア新駅時代を迎えるわが市の今後の方向を考えるうえで、大いに参考になる。