林真理子さんを中心に約180人の文化人が甲府に集結し、様々なテーマで講義を開く、「エンジン01文化戦略会議 オープンカレッジin甲府」が11月29日~12月1日の日程で開催された。
各講義90分で受講料500円、講師は日本に名だたる文化人であるがほとんどボランティアで講義をしていただいた。講義ときくと堅苦しいイメージだが、複数の文化人が一つのテーマについてそれぞれ意見を述べ合う形式で、軽妙な語り口で全然飽きさせないものであった。
どの講座を選ぼうか迷ったが、地下の空洞調査で最新技術が注目を集めている(株)ジオサーチの富田社長がチーフを務める「生き延びるための防災・減災」(29日の2時限目)と、作詞家で音楽評論家の湯川れい子さんがチーフを務める「われら動物愛護委員会」(29日の3時限目)を受講した。それぞれについて、2回にわたって概要を紹介したい。
まず、「生き延びるための防災・減災」である。
パネラーは、先ほどの座長の富田社長のほか、篠田新潟市長、高知県の若き尾崎知事、横浜の赤レンガ倉庫を手掛けた建築家の今川氏の4名である。
最初に、篠田新潟市長から、中越地震や豪雨災害の経験をもとに蓄積された、防災対策のノウハウが東日本大地震の際に被災地の救援や復旧支援に大いに役立った旨の報告があった。実際、どこよりも早く現地入りし、どのような手を打つべきかを的確にアドバイスしたのは、新潟市の支援隊である。
高知県の尾崎知事からは、東海、東南海、南海トラフの3連動地震の被害想定が国で発表された時の県民の衝撃の大きさにふれ、「一切の防災訓練が無意味」と県民の心が折れそうになった時に、たとえ30メートルを超す津波が来ても大丈夫な「地下シェルター」構想を発表し、再び県民の心を災害に立ち向かわせる方向に転換していった苦労話を披露していただいた。
建築家の今井氏は、外科医的建築という新たな発想の説明があった。建物を人間の体に例え、年を取るごとに「弱くなりやすい部位」、例えば柱と柱の接合部分(人間でいえば関節)に特殊な樹脂材を注入することによる長寿命化の手法を教えていただいた。
これに対して、富田座長は「内科医的」な観点から、自社で開発した優れものの技術である、電磁波を使った地下空洞探査について説明していただいた。これは、特殊装置を搭載した「スケルカ」という車両で不通に走行するだけで地下の空洞箇所をピンポイントで探し当てるもので、東日本大震災の折にも、空洞化が原因で道路が陥没し、緊急車両や救援物資の搬送車両が通行不能に陥った被災地で、他の重要路線でも多くの空洞箇所を探し当て、緊急輸送路の維持に一役買ったものである。
この技術は、他都市でも注目され、都内のいくつかの区や、神奈川県、北海道でも同社に委託して、重要路線の地下空洞化の調査を実施し、多くの箇所の陥没予防に貢献している。
それぞれの立場からまさにこれまでの経験の蓄積から「生き延びるための手法」を構築しており、今後の大規模災害対策を考えるにあたって大いにサジェスチョンを受けた。
特に、何度も地震の被害に見舞われている新潟市長の首都圏直下型や3連動地震が万が一発生した際に、新潟市が「救援の拠点」の役割を引き受ける、という確信にあふれた話にふれ、このところ大きな災害に見舞われていない甲府市が今度は「支援の拠点」になるべきだという思いを強くした。
また、尾崎知事の話からは、県民、市民の心の負担を軽くするようなリーダーシップをとることの重要性を教えていただいた。
地下の空洞化調査も、これが原因で道路が陥没した場合には、それこそ甚大な被害が発生することが容易に想像でき、大規模地震発生時ばかりでなく、普段から繰り返し使用されている道路だからこそ陥没が想定される空洞化箇所は予防管理の観点から早急に手をうつ必要性を強く感じた。あの笹子トンネルの天井板崩落事故は万全の予防的措置を講じることの重要性を教えてくれる。
道路陥没は大規模地震時にのみ発生するものではないだろう。今問題となっている社会インフラの老朽化対策は、すでにコンクリートの耐用年数に達しつつあるインフラについて、待ったなしに予防的措置を講ずることを要求しているのである。市民の安全確保が最優先の課題である以上、事故発生の懸念が少しでもあれば、早急に空洞化調査を実施して対策を講ずるのは行政の重要な使命である。
この講義で得たものをしっかり議会活動を通じて還元していく。そう決意した90分であった。