さて、2つ目の請願である。よくもまあ、これほど並べ立てかと思うほど最初から最後まで、事実に反する独りよがりに終始している。
冒頭、いきなりこんな表現で始まっている。「安倍内閣と自民・公明両党は、国民世論を真っ向から踏みにじり、暴挙に暴挙を重ね、特定秘密保護法を強行成立させました。」と。総務委員会では、欺瞞を暴くために、そのレベルに合わせて、子どものケンカレベルで議論を吹っ掛けることとした。
まず、「国民」とは一体誰ですか?保護法に反対している人だけが「国民」ですか?私も国に税金を納め、国籍も日本ですが、賛成している私は「国民」ではないということですか?請願の紹介議員は皆、下を向き始めた。
追撃はこれだけではない。「暴挙に暴挙を重ね」とは何を指すのですか?法案を提出したことが暴挙ですか?議論を重ね修正までして最終的に憲法の規定に従って国会で「多数決」で決定したことが暴挙ですか?そうであるならば、この請願をこれから審議して、最後多数決で可否を決定することも「暴挙」になってしまいますよ。紹介議員は完全に声が出ない。
彼らの常套手段だが、自分たちの主張が通らないと「国民世論」を無視した、とか「強行採決」だとか声を大にして叫ぶ。典型的な「ノイジー・マイノリティ」である。民主主義における意思決定は、お互いが対案を持ち寄り、議論を重ね、譲歩すべきところは譲歩し、着地点を見出すことが求められる。そして、最終的には、「多数決」により意思決定をオーソライズする。最初から対案も出さずに議論も拒否しておきながら、最後、憲法でも規定されている「多数決」による意思決定に罵声を浴びせる。
これまで私は、民主的な社会の在り方として、「多様性への寛容性」を何回かこのブログでも記してきた。社会の構成員がお互いの「差異」を認め合い尊重しあう社会、いわゆる「ソーシャル・インクルージョン」を目指すべきだと主張してきた。
この立場からは、自分の意見と異なる意見を「国民世論」という偽装を使って排除しようとする姿勢は絶対に認められない。しかも民主主義の意思決定システムの根幹をなす「多数決原理」を根本から否定する姿勢は、いかがなものだろうか。
請願の独りよがりな決めつけはまだ続く。1つ目の請願と同じく、「どんな行政情報も恣意的に特定秘密と指定され、事実上永久的に隠し続けることが出来る」という。法律の規定を全く無視した、事実に反する主張である。
「秘密と知らないまま秘密に近付けば、一般国民や報道機関までもが厳しく処罰される」ともいう。法律に何と書いてあるか、目を開けてよく見た方がいい。しかも一般国民で「秘密と知らないまま秘密に近付く」人がいるのだろうか。そもそも「特定秘密」に近づく国民とはどういう国民を言うのだろうか。007でもあるまいし。こんな文言を真に受けて紹介議員に名を連ねている方々がはたして、法律を読んでいるのか心配になってくる。
極めつけは、「法案の審議時間が短く、最後は強行採決されました。こんな議会制民主主義の破壊はかつてありません。このようにして成立させた法案は、法律として絶対に認めるわけにはいきません。」だと。ここに彼らの本質が浮き彫りになっている。法案の審議状況をみるがいい。衆議院で各党に対案を持ち寄り集中的に議論をしようと呼びかけ、維新、みんなの党が対案を出して、論点を徹底的に議論し合った。その結果、秘密指定手続きの厳格化とか取材行為の違法性阻却など、完璧な修正法案が仕上がり、議論も出尽くしたために衆議院で多数決で可決し、参議院に送られた。
参議院でもある政党はなかなか対案も出さず、しかも審議を一時拒絶し、時間稼ぎに走った。挙句は審議を十分にしないことを理由としたお門違いの内閣不信任案の提出である。審議するのは国会であり、内閣ではない。明らかに時間切れによる廃案を狙ってきた。議論の土俵にも乗らないで言論の府の一員として恥ずかしくないのだろうか?こんな状況だから、もはや議論が出尽くしたとして、憲法の規定に従って採決したまでである。
法律の成立に手続き的な瑕疵はなく、「議会制民主主義の破壊」などとヒステリックに叫ぶような状況でないことは明らかである。しかも国権の最高機関である国会の決定を真っ向から否定する「法律として認めるわけにはいきません」とは、いったい何事であろうか?
最後にこう締めくくっている。「特定秘密保護法は、国民主権、基本的人権、平和主義という日本国憲法の基本原則をことごとく蹂躙する違憲立法であり、撤廃すべき」だと。
もはや一夜漬けの憲法知識よりひどい。国民主権とは、選挙で選ばれた国民の代表である国会議員で構成される国権の最高機関の国会で意思決定を行っていくシステムを言う。そこには自分たちの意見と異なる国民の代表も当然存在する。自分たちだけが「国民」でないことは誰でもわかる。基本的人権を蹂躙する?法律に何と書いてあるかもう一度よく読んだらどうだろう?平和主義を蹂躙する?法律のどこに「戦争」につながる規定があるか明確な根拠を示してほしい。
最初から最後まで、間違いだらけ、法律の規定を無視した「個人の感想」を連ねているだけの請願のどこに「願意の妥当性」を見出していくのか?審査に携わる総務委員会の委員がどのような主張をしたか?次回はこれを紹介していく。