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3月定例会意見書は、はたして?(4)

前回まで、甲府市議会に提出された2つの「特定秘密保護法の撤廃を求める請願」がいかに事実誤認をし、法律の内容を無視した独りよがりのものであるか紹介してきた。今回は、審議を付託された所管の総務委員会での状況を紹介する。

請願の処理については、3つの選択肢がある。一つ目は、「継続審議」、すなわち今議会では結論を出さずに議会閉会後も引き続き審議を行い、次回以降の定例会で結論を出すやり方である。残り2つは結論を出すやり方である。一つは「願意妥当」としてこれを採択するものであり、もう一方は「願意に妥当性が認められない」として不採択とする選択肢である。

今回出された請願の内容は特定秘密保護法を撤廃するよう、「甲府市議会として」国に意見書を提出してほしい、というものである。これを認める場合、通常は、全会一致で処理する。なぜなら、特に賛成、反対双方の意見が拮抗している内容のものを議会という組織の意思として提出することは、好ましいことではないからである。

これまで議会は良識の府として機能してきた。あまりに請願内容がひどいものであれば、たとえ主義主張が異なる議員であっても、妥当な処理をしてきた。それだけ、請願内容について良識ある判断をしてきた伝統が甲府市議会にはある。

今回の2つの請願処理について、継続審議とせずに結論を出す動きがあることをキャッチしたため、私はこれまで見てきたように請願の問題点の多さについて、法律や事実関係に即して懇切丁寧に説明し、妥当な判断を求めた。いやしくも市議会として意見書を出す以上、簡単にいえば恥ずかしくない内容にしなければ、その質を疑われてしまうからである。

まず、一つ目の請願の審議が始まった。最初に、すでに成立した法律について地方議会で審議するメリットはなく不採択とすべし、という意見があった。そのあと紹介議員という立場で、請願の内容をなぞった採択を求める意見があり、その次に私が時間をかけて問題点をいちいち取り上げ、できる限りわかりやすく説明して不採択を求めた。このあと、別の紹介議員から採択を求める意見が出された。驚いたことは、最大会派所属議員が採択の意見表明をしたことだった。

紹介議員の主張は、もっぱら現政権の右傾化を論拠としているように見えた。請願に記されている請願理由ではなく、現下の状況から秘密保護法の撤廃は妥当という趣旨と記憶している。特に今のNHK問題を取り上げ、報道機関の委縮が心配だということも付け加えながら、また、沖縄返還時の密約があった、という既に大昔に大騒ぎした事例を持ち出しながら。

その主張には失望した。請願の審査はそこに書かれていることに妥当性があるかどうか、である。請願理由に書かれていないNHK問題をなぜ自己の主張の論拠にするのか。また大昔の事例も請願理由に書かれておらず、請願理由の妥当性の判断とは関係がないではないか。問題は、請願に言うところの特定秘密保護法自体に欠陥があるかどうかである。

さすがに最大会派所属委員は、特定秘密保護法の中身に論及した。最長60年は長すぎる、ここにいる誰も生きていない、また秘密の範囲を定める法律別表も「その他」という文言が多いから、秘密の範囲が拡大する。ざっとこんな内容だった。

わずかに法的論争っぽくなっていたが、長期にわたって秘密とする必要があるから期間を長くとっているに過ぎない。ほんの数年で秘密解除して国の安全を即脅かされたらどうするのか。また「その他」条項であるが、具体的例示の後に挿入されている文言であり、言うところの「その他全部」という意味ではない。法律を学んだことのある者であれば、基礎中の基礎知識である。,

こうして、採択を求める意見が3人、不採択を求める意見が2人。8人いる委員会で、委員長を除く7人のうち残り2人の態度が注目された。起立による採決が行われた。

結果は採択5人、不採択2人。残りの2人は最大会派所属議員であり、おそらく暗黙の「党議拘束」があったのだろう。この瞬間に請願に書かれた請願理由の当不当の判断が吹っ飛び、あまりに法的に問題が多い請願が委員会を通過してしまった。

私も反省した。理路整然と法的問題点及び事実関係の誤認を指摘すれば、紹介議員以外は正しく理解してくれるだろう、と期待していた。だが、この期待は甘かった。理由付けがあまりにおかしいものを「願意妥当」だとして認めることは、議員にとってどんな結果になるか。自明の理だと思っていたが。

それにしてもこの審議のシステムは、いったん意見表明をした後は再度意見表明に立てないという不具合がある。だから自分より後に登壇する委員へは事実上反論することが出来ない。いわゆる議員間討議のシステムがないのである。これでは言いっぱなしになってしまい、ディスカッションとはほど遠いものとなってしまう。

いつもは極力一番最後に登場するようにしているが、今回は3番目に登場してしまった。早すぎた。

こうして、1つ目の請願は採択され、2つ目の請願の処理について、趣旨が同じなので「みなし採択」にする旨委員長から提案があり、決まりかけたが、すかさず待ったをかけた。なぜなら、こっちの請願の方がむしろ内容がひどすぎ、これを意見表明の機会もなくそのまま通すことは断じてさせまいと思ったからである。続きは、次回に譲ることとする。

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