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会派視察(4)~水俣市~

視察3日目、最終日の2月14日は、水俣市の「日本一の読書のまちづくり」について研修した。

水俣市は、言わずと知れた4大公害病のひとつ、水俣病の発祥の地であり、その原因企業とされるチッソ株式会社とともに発展してきた街である。現在も患者認定の問題など、水俣病の対応は続いている。

企業城下町として栄えてきたゆえの現場の苦悩は計り知れないものがあるが、現在はこれをバネに、「日本一の環境都市」を目指したまちづくりに懸命に取り組んでいる。長い間公害病に苦しんできた自治体だけに、発信している「環境」というキーワードには非常な重みがある。

さて、今回の視察項目は、「日本一の読書のまちづくり」である。その中心的な役割を担っている水俣市立図書館の担当者から、お話を伺った。

水俣市立図書館の沿革をひもとくと、昭和4年5月に、明治・大正・昭和の3代にわたり活躍した徳富蘇峰の寄付金をもとにして設立した「町立淇水文庫」がその前身である。

徳富蘇峰は、当時の日本の代表的なジャーナリストであり、思想家、歴史家、評論家である。その父淇水の熱烈な郷土愛をしのび、町に贈った壱万円が文庫開館の大きな原動力となった。

昭和57年4月に、現在地に移転し、水俣市公民館・水俣市立図書館の複合施設として生まれ変わった。読書のまちづくりは、こうした偉大な思想家が郷土のために遺した貴重な「文化遺産」とこれを脈々と受け継ぎ伝えてきた水俣市民の思いがそのルーツにあるといってよい。

平成19年11月10日に水俣市は「日本一の読書のまちづくり」宣言を行った。そこには、「読書活動は言葉・感性・表現力・創造力を豊かにし、人生をより深く生きる力を身につけていくうえで、欠くことのできないものであり、私たちの生活をより豊かに潤いのあるものにしてくれます。」と、読書の効用を鋭く指摘している。

ここから、「すべての市民が読書に親しみ、人生をよりよく深く見つめ、生命(いのち)安らぐまちの実現をめざして」日本一の読書のまちづくりを宣言している。

(‘ 甲府市でも「子どもの」読書活動を推進する計画が策定されているが、水俣市では子どものみならず、市民すべてが読書活動を進めていくことをうたっている。これが徳富蘇峰を生んだ風土のひとつの結晶ではないか、と担当者の説明を伺っていてふと思った。

近年のインターネットなどの電子メディアの急速な普及が進む中で、活字離れ、読書離れが指摘されている。ある識者は、視覚メディアがもたらす刹那的、感情的な行動様式の弊害を指摘し、これを克服すべく活字文化の復興を訴え、大きな注目を集めたことは記憶に新しい。

水俣市は市立図書館を核として、いかにして市民に「本」に親しんでもらうかをいろいろと模索している。むろん、予算が多くはかけられない。ここで担当者のアイディアがほとばしる。

公民館などの人が多く集まる場所に設置した「まちかど図書コーナー」、商店街にある洋菓子店や調剤薬局の協力を得て店舗内の図書館の蔵書を置く「本よみ場(BAR)」、また、市役所やコンビニに24時間返却OKの「館外ブックポスト」を設置するなど、日常生活の営みの一部として「本との出会い」を組み込む努力をしている。

また、秋の「読書週間」にあわせて、利用者への感謝と新規利用者の獲得のため、様々なイベントを企画し、これには市役所の若手を残らず動員し、自主的に運営させるなど、予算をかけずに最大の効果を、と奮闘している。もちろん熊本県の部長「くまもん」も協力したことは言うまでもない。

冒頭、水俣市は公害病をバネに日本一の環境都市を目指していると紹介した。読書のまちづくりにも「環境」を取り入れた取り組みを行っている。それが、みなまた環境絵本大賞である。

「環境」をテーマとした絵本の原文を募集し、大賞作品に作画を加えて出版しているものである。現在、第1回大賞作品「ひょっこりじぞう」(23年3月出版)、第2回大賞作品「古どうぐ~るぐる」(25年3月出版)が世に出ている。もちろん、用意周到の担当者から、喜んで購入させていただいた。

徳富蘇峰という偉大な思想家をルーツとし、その文化遺産を脈々と受け継ぎ、更なる文化の大輪を咲かせようとする水俣市の「日本一の読書のまちづくり」。公害病という現代文明の負の部分を背負いながら反転攻勢をかけるその姿勢に学ぶ点は極めて多い。

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