10月28日~30日の3日間、甲府市議会総務委員会の行政視察で、新潟県三条市、同魚沼市、群馬県前橋市の3自治体を訪問した。
今回のテーマは、三条市の「デマンド交通ひめさゆり」、魚沼市の「空き家等の適正管理条例の施行状況」、前橋市の「中心市街地活性化計画の状況」である。
初日の28日は新潟県三条市にお邪魔した。甲府駅から9時10分発のスーパーあずさに乗り、新宿から大宮経由で上越新幹線燕三条駅に着いたのが午後1時過ぎである。
ちょうど駅前にある宿泊先に荷物を預けて、三条市の送迎車で駅から車で約10分の三条市役所に2時前に到着。早速「デマンド交通ひめさゆり」について担当者から説明していただいた。
デマンド交通は、その名の通り要望に応じて車両を運行させる交通方式で、決められたルートを決められた時間に運行させる従来のバス方式では必ずしも住民の要望に応えきれないことから生まれたものである。
特に、高齢者や子どもなどのいわゆる移動手段が限られている層にとって、公共交通機関としての電車やバスは必要不可欠の移動手段であるにもかかわらず、その使い勝手の点から乗車率は低下傾向にあり、必然的に自家用車に頼らざるを得ない地方都市が圧倒的に多い。
乗客数が減少すれば赤字が増え、やがては路線廃止となることは必然であり、路線維持のための公的な補助や自治体運営のコミュニティバスなどにより、市民の足の確保に多大なコストをかけているのが現状である。’
高齢化の急速な進行により、近年、買い物難民や通院難民といった大きな課題に直面している地方都市も増えている。本市でもバス路線の廃止が高齢者の日常生活に大きな影響を及ぼしている地域がある。
さこうした課題に応えるべく「デマンド交通」という新しい交通体系の模索が始まっている。本市でもかつて相川地区でその社会実験が行われたことは記憶に新しい。が、結果は芳しくなかったのが事実である。登録と実際の利用の間の大きなギャップがあったようだ
しかしながら、今後の高齢化の進行を考えると、本市でもデマンド交通を始めとする新たな公共交通体系の構築が急がれる。今回の視察は、こうした課題意識から、先進都市としてモデルケースとなっている三条市のデマンド交通の状況を視察したものである。
三条市は人口約10万人、面積430k㎡強と、人口で本市の約半分、面積は約倍であり、高齢化率は28.2%と、本市と同様全国平均を上回るスピードで高齢化が進行している。
平成の大合併で旧三条市、栄町、下田村の3市町村が合併し、現在の三条市となっている。もともとものづくりで栄えた地域で、刃物など極めて高い技術をもつ伝統産業が今も息づいている。
8年前に、当時全国最年少で当選した現市長の公約として、このデマンド交通を始めとする公共交通体系の検討がスタートし、翌年国土交通省の地域公共交通総合連携計画策定調査事業の全国初の認定を受けた。
その背景には、交通機関の発達した東京生まれの市長が三条市の公共交通機関の現状を危惧し、何としても公共交通の再生を図ろう、という強い思いがあったと伺った。改革を遂行するうえで不可欠なリーダーの「強き一念」である。
同市の公共交通が抱える課題として挙げられたのは、(1)公共交通負のスパイラル、すなわち、利用者数の減少が不採算路線のサービス低下をもたらし、これがもとで更なる利用者の減少をもたらしている現状、(2)マイカー依存が高齢運転者の事故の多発や家族送迎の負担の増大をもたらしている現状、(3)コミュニティバスの利用率の低下による行政コストの増大、などがある。これは多くの地方都市が抱える共通の課題である。
三条市では、全市的な三条市デマンド交通(通称ひめさゆり)、高校生の通学に特化した「高校生通学ライナーバス」、コミュニティの結びつきが強い井栗地区のコミュニティバスの、それぞれの特性に応じた「社会実験」を3期行い、本格実施に移している。
いずれも、実験の結果を検証し、新たに生じた課題の克服を繰り返して、本格実施しており、これは事業実施の基本的なあり方である、PDCAサイクルそのものといえる。
このうち、デマンド交通の実施プロセスが面白い。デマンド方式のうち、利用者の居宅から目的地まで車を運行させる「ドア・トウ・ドア」方式を採用せず、停留所を設置して、停留所間を運行する方式を採用した。
当初はバス会社に運行を委託したが、細い路地には入れず、小回りが利かないバスによる運行であったため、思うような成果が上がらず、バス会社は撤退した。
かわりに登場したのがタクシーである。これなら狭い道路でもOKであり、利用者のニーズにこたえることが容易になった。しかも、運行時間を夕方の時間までとすることにより、タクシー本来の営業と両立させることが可能となった。
しかも停留所は598か所ときめ細かく配置し、利用者登録不要とすることによって、利用しやすくなった。料金もバス並みに低廉だ。担当者の言葉を借りると、バスとタクシーの中間みたいな交通システムである。
社会実験による試行錯誤を繰り返しながら、常に「利用者のため」を考えながら事業展開している点は脱帽である。「公」にありがちな「出来ない理由を探す」という姿勢ではなく、「どうしたら出来るか」を考える姿勢である。
業界からの「民業圧迫」といった声は聞かれないうである。特にバス会社はデマンド交通を委託されながらうまくいかなかったという負い目があるし、タクシー業界も昼間の時間帯はほとんど利用客がいないこともあり、むしろ歓迎しているそうだ。
こうした挑戦する姿勢があればこそ公共交通システムの調査研究といったら国交省でも真っ先に三条市に打診するという。これもトップの何が何でも、という強いリーダーシップの賜物だと思わずにはいられない。