視察2日目の10月29日は、魚沼市の空き家対策についてである。
魚沼市は、平成16年11月1日に北魚沼6か町村(堀之内町・小出町・湯之谷村・広神村・守門村・入広瀬村)が合併して誕生した人口39,000人強の市である。10年前の新潟中越地震の際は、この地域も大きな被害に見舞われたという。
俳優の渡辺謙さんはここ魚沼出身で、市制10周年の11月1日に名誉市民になられるそうである。
魚沼市は、いわずとしれた、「魚沼産こしひかり」の産地であり、この日の昼食で食べたこしひかりは、まさに絶品。思わずおかわりをするほど美味であった。もちろんお土産でこしひかりを買い、早速宅急便で自宅に送ったのはいうまでもない。
冬は降雪が半端ではなく、毎年のように3メートルもの積雪量を記録すると伺った。特に平成23年から3年連続で豪雪に見舞われ、市民、自治会からの苦情・相談を受け、市が緊急に職員、業者による除雪を実施してきたが、空き家に関して様々課題が浮かび上がった。
本市でも空き家が周辺環境にもたらす悪影響が次第に問題化しつつある。が通常は建物の劣化のスピードはそれほど速くない。
しかし、豪雪地帯では降雪により瞬時に建物倒壊危険が顕現することが多い。特に魚沼市一帯に降る雪は水分が多く、要するに「重い」のである。屋根が崩落する危険もさることながら、庇雪の落雪による人的被害の危険も大きいという。
所有者が明らかな場合は、連絡して善処を要請することも可能であるが、問題の多い空き家は、所有者が所在不明、相続放棄による所有者の不在というケースが圧倒的に多い。
行政が所有者に代わって緊急に対策を取ろうとしても、個人の財産にどこまで手が出せるかという問題、また個人の財産に税金をむやみに投入できないという問題がある。民法第697条の「事務管理」規定を適用することも一案であるが、限界がある。
建築基準法や消防法など関係しそうな法律もはたして空き家に対してどこまで適用できるのか。行政内部でもどこが窓口になるのか。など、これまでの除雪作業を通じて、抜本的な対策の必要性を痛感し、秋田県大仙市などの空き家条例のような条例制定を検討するに至ったそうである。
こうして、平成24年10月に「魚沼市空き家等の適正管理及び有効活用に関する条例」が制定された。
この条例では、所有者への適正管理の指導・助言・勧告の措置、及び命令、氏名等の公表といった不利益措置のほか、代執行権を行政に付与しており、ここまでは空き家が周辺に対して及ぼす危険を除去するための必要な制度を規定するものであり、空き家条例では一般的に規定されるものである。
このほかに、こうした危険状態に陥る前に、都会からの移住者に空き家を提供する「空き家バンク」的な有効活用の途も規定している。
条例制定の効果は少なからずあったようだ。条例に基づく「助言・指導書」を送付することにより、それまで音信不通だった所有者から連絡が寄せられたり、自主的な解体・撤去につながった例もある。
また、所有者特定のための個人情報の入手も可能となり、対策が取りやすくなったことも挙げられる。これも法的根拠が明確化したことによる効果だ。
しかし、問題が全て解決したわけではない。相続放棄による所有者不在の空き家や所在不明の空き家は依然残っている。また、今後の高齢化の進行により管理不全の空き家の増加や、解体費用がねん出できず、経済面や税制面の負担から放置される空き家の増加が懸念されるという。
市では、やはり法律の整備や空き家対策に要する自治体負担を軽減するための交付税などの財政措置の創設を要望したいとしている。個人の財産権と公共の危険除去との間の調整、これから派生する「税金」を個人の財産に投入することの是非。一自治体だけではもはや解決が困難な状況に至っている。
魚沼市では、豪雪による空き家発の危険性の除去という喫緊の課題を解決するための一つのツールとしての条例制定であった。本市でも2月の歴史的な豪雪を経験して、空き家の問題を体感した。
そこには課題が共通する。それは、本来建物所有者の責務として適正な管理があるにもかかわらず、解体費用の点や再び住む予定もない家屋に維持費用を支出する例が少ないこと。近隣との人間関係の希薄化から周囲に迷惑をかけてはならないという意識の希薄化。
また、仮に代執行ケースが増えた場合に、これ幸いと空き家を放置する風潮を助長しかねないという行政の苦悩。条例制定によってもなお根本的な空き家問題の解決にならない可能性も依然存在する。
現在、国でもこうした空き家対策に係る法整備を検討しているようであるが、管理不全に陥る前に有効活用を図る仕組みの整備も含め、早急に対策を講じてほしい。
特に、都市への若者の流出や人口減に苦悩する地方の立場からは、空き家問題は地方創生の最重要課題といえるのではないだろうか。