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総務委員会行政視察(3)~前橋市~

視察最終日の10月30日は、群馬県前橋市を訪れ、中心市街地活性化の取り組みの状況について視察した。

前橋市は群馬県の県庁所在市であり、人口34万人の中核市である。よく新幹線の停車駅がある隣の高崎市と比較されがちであるが、世界遺産に登録された富岡製糸場に象徴される県の中心産業であった絹の出荷基地として、前橋駅は倉庫街が拡がる重要な拠点駅であったようだ。

こうした歴史的な背景もあり、県庁所在市としての役割を担ってきたが、ここでも中心市街地の衰退という共通の課題があった。前橋駅周辺は旧倉庫街の名残からか商業施設はほとんど見られない。高崎駅と比べるとオフィス街的な様相をみせている。

中心市街地は、駅から北にやや離れたところに形成されている。自動車保有率が高いことから、ここでも郊外のロードサイド店舗へと顧客の流出があり、相対的に中心街のプレゼンスの低下がみられる。あえて中心街に出向く理由が次第に薄れてきたというのである。

結果として、空き店舗の増加に拍車がかかり、他都市同様中心市街地の活性化計画を策定し各種のまちづくりの事業を展開している。平成23年から計画期間を28年までの5年間として策定した計画であるが、本市のように国の認定をとっていない。

周辺県の中心都市でも国の認定を受けないところが多いという。そこにはそれぞれの市が抱える固有の事情があるようだ。おそらく中心街の再整備だけでなく郊外の計画的整備なども視野に入れているからと推察される。

前橋市の中心市街地活性化計画に大きな影響を与えた要因の一つとして、西武系のデパートの撤退があると考えられる。その跡地の活用策の検討から、一旦策定した基本計画の一部改定を本年3月に行っている。

前橋市は、この大型商業施設の跡地を「前橋プラザ元気21」及び「アーツ前橋」という文化教育施設へと転換した。通常は別の経営主体による商業施設の継続を考えるところであるが、あえてそのような方策をとらないところに、中心街と郊外の商業というレベルでの役割分担の現状と将来をしっかり踏まえていると感じる。

車社会における利便性という点ではるかに優る郊外型店舗に対して同じレベルでの競争を仕掛けても結果は見えている。そのため、前橋市は中心市街地の活性化の基本的方向性をこれまでの「商業オンリー」である「中心市街地を一つのショッピングモールと捉える」から「中心市街地の歴史・文化や固有の強みを守りながら、人と人とが交流する拠点として」と重要な転換を図っている。

商業による活性化から、商業+商業外による活性化へとシフトさせている。今後のまちづくりにとって何が重要かに気が付いたからではないか。まさに「わが意を得たり」と感激した所である。

これを受けて、重点的取り組み事項も、これまでのハード整備中心の考え方からアーツ前橋を核とした芸術文化活動の推進や街なか居住の促進といったソフト事業重視の方向へと舵をきっている。

拠点施設となる「前橋プラザ元気21」はH19年12月にオープンした。施設は地下に地元スーパーが入居し、上階には群馬医療福祉大学、中階に公民館、地域交流プラザ、2階に子ども図書館、1階にイベント広場、コミュニティFM、喫茶店など、バラエティに富んだ施設内容となっている。

特に注目したいのは子ども図書館である。広い空間に多種多様な児童書などが収納されている。むろん、読み聞かせのスペースも確保されている。次の世代を強く意識した取り組みであり、大変参考になる。

空中通路でつながっている隣の建物に「アーツ前橋」と立体駐車場が整備されている。アーツ前橋は、一般の美術館のように所蔵品を鑑賞させるだけのいわば「受動的な」施設を目指すのではなく、むしろ地域へのアートの場の提供と捉えている。従って、特定の芸術家や一部の関係者だけではなく、「誰でも」活用でき、多様な人が集うことによる交流の場の創出を目指しているといえる。

商業以外の面で活性化を促進する方策として前橋市は、まちなかでの市民活動支援の仕組みづくりを進めている。イベントへの市有地の低廉での貸し出しや物品の無償貸出しなどを行うほか、まちなかの活力創出につながるイベントへの補助、情報誌のこまめな発行などに取り組んでいる。

また、市民レベルでの空き店舗利活用の動きも生まれている。面白いのは、「前橋〇〇部」という部活のノリでまちなかを起点とした活動を展開しているグループである。発起人は30代半ばの青年。FBでつながる仲間が集まり、まちなかの空き店舗の一室を「部室」にして活動を開始し、そのゆるやかさが受けて今では50団体を超す〇〇部が誕生し、昨年には日経新聞やフジTVなどにも取り上げられ、ブームとなっているという。

特に決まった活動を行うのではなく、また行政の補助等は一切受けていないという。それぞれの思いを持った様々な人々が自然と集まっており、まさにまちなか活性の原点を見るような思いである。

このほか、空き店舗をリフォームして学生向けのシェアハウスを提供している「シェアフラット馬場川」などの取り組みも誕生している。また、行政でも従来型の中心街の空き店舗を活用した開店への支援や起業への支援なども行っている。

このような仕掛けを効果的に展開する行政の拠点として、前橋市は昨年4月に中心市街地に「まちなか再生室」をオープンし、6人体制で活性化に向けた様々な取り組みを展開している。

仕掛けは徐々に功を奏しつつある。その根底にあるのは、やはり、「人」に焦点をあてた基本コンセプトの転換であると思われる。「交流」というキーワードに早い時期に気付いた結果だと考える。この点をわが市でも大いに宣揚していくべきではないか。

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