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ボトムアップの地域づくり

地方にとって現下の最大の課題は、なんといっても地方創生だろう。

人口減少局面を迎えた日本社会が、今後も持続可能な活力を維持するために、疲弊した地方を再び活性化させることが喫緊の課題ととらえられている。

特に東京一極集中を排し、地方への人の流れをつくることは、東京圏と地方の双方に大きな効果をもたらす。いわゆる増田レポートが「地方消滅」論を提示し、危機意識の共有に大きな影響を与えたこともあり、地方創生に向けた国をあげての取り組みが開始した。

地方消滅論には幾多の批判も寄せられているが、地方が自ら考え、作り上げていくべしという方向性は、遅きに失するという感がするものの、是認されるべきものである。

一つの自治体およびその自治体内部のそれぞれの地域がまず自ら課題解決に挑戦するというあり方。これまでのひも付き補助金政策が地方の依存体質を回復不可能になるまで助長し、その結果、自らの課題について考える能力や意欲を失わせてきた。

現在の日本の地方都市の現状をみればわかるとおり、どこに行っても同じ病理を抱えていることがその帰結となっている。

しかも、その現状を打開しようと行政がもがけばもがくほど、課題解決は遠ざかっている。様々な公共投資を行い、何とかまちを再生しようと努力したが、残念ながら現状打破には程遠い結果となっていると言わざるを得ない。ややもすれば「成功事例」の単純な模倣ともいうべき、均質化した都市政策が横行している。

その大きな原因はこれまで主張してきたように、まちづくりにとって重要な視点の見落としにある。いうまでもなく、「担い手」をいかにプレーヤーとして登場させるか、という点がこれまで置き去りにされてきたことにある。「依存体質」を排し、自分たちの地域に誇りを持ち、懸命に自己の地域づくりに汗をかく、このような担い手を育成してきたか。

今、人口減少の荒波を跳ね返し、ヴィヴィッドなまちづくりを進めているところには必ずと言っていいほど、キーパーソンというべきリーダーが存在する。もちろん、鷲田清一氏がいうところの「フォロワー」も不可欠である。

がしかし、自分が何とか現状を打破しようという地域愛に裏打ちされた人材がやはり必要であり、こうした人材のまわりには不思議と「フォロワー」が集まってくる。

諸富徹教授の最近のレポート「エネルギー自治で地域再生」では、長野県飯田市の再生可能エネルギー事業立ち上げの事例を通して、地域の課題を住民全体で考え、解決策を全体で考える作業を通じて、「住民自治」の強化につながっていることを報告している。

飯田市では、「おひさま進歩エネルギー株式会社」という市民共同出資による太陽光発電事業のパイオニア企業がある。大手企業がメガソーラー事業に手を染めるはるか以前から、まちづくり運動として「下から」の事業展開を進めてきた。

その前身となるNPO法人の中心者がそのキーパーソンである。その取り組みは市内の他地域に波及し、ソーシャルビジネスの典型として高い評価を受けている。よく言われる「地域内循環」がまさに実現されているのである。

たとえば、電気を他から「買う」となれば、その地域から現金が流出してしまう。また、地域内で発電する場合でも燃料を他から手当てするのであれば、やはり同様の結果となる。バイオマス発電などで燃料となるペレットを地域から仕入れるのであれば、その分だけ地域から富が流出する。

こうした地域からの富のロスを極小化することによって、例えば1次、2次産業でも地域内での利益率を極大にすることができる。

飯田市ではこうした課題への挑戦を住民組織の徹底した議論を通じて行っている。上から提示されるのではなく、すべて「下から」つまりボトムアップの思想である。

飯田市では古くから公民館を通じた住民活動の伝統があるという。歴史的な風土がそこにあるというべきだろうか。

「地域から甲府を元気に」という主張が10年の歳月を経ていよいよ日の目を見る時がいよいよきたようだ。

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