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9月定例会一般質問(3)

3番目の質問は、「人の流れをつくることについて」である。

地方創生のメルクマールのもと、人口減少局面を迎えた各自治体とも人口ビジョン、総合戦略を策定している。その中心的な柱はいかに再び地方に人の流れをつくっていくか、である。

出生率がなかなか回復せず、国全体が少子化に向かってから既にかなりの年数が経過している。人口の自然減の流れの中で行き着く先は結局人口減少社会である。

地方における人口減の要因はこうした自然減ばかりではない。進学や就職などで若者が都会へ転出したまま戻ってこない「社会減」も大きな問題である。

甲府市が策定した人口ビジョンによると、若年世代の転出入の特徴的な動きを示すのは、高校・大学進学期における転入超過と大学卒業・就職期における転出超過であるとされている。

進学期における転入超過は、県外・市外の高校・大学へ進学する者がいるものの、それを上回る数の市内高校・大学への市外からの進学者がいるということである。

また、大学卒業・就職期の転出超過は、就職を機に市外に出ていくケースのほか、県外の大学に進学して残念ながら就職のために市内へ戻ってくる者が少ないということも考えられる。

そこで、市外から甲府の学校にせっかく進学した者を卒業後も市内に留まってもらうこと、市外・県外の学校に進学した者に甲府に戻ってきてもらうこと、こうした人の流れをいかにつくっていくか、その方途は何かについて考える必要がある。

これは定住人口という側面からのアプローチであり、もちろん市内を訪れる者を増やすという交流人口の観点を否定するものではない。しかし、甲府市の将来にわたる持続可能性という観点からはやはり社会づくりの担い手を確保するための定住人口からのアプローチを特に考えていきたい。

質問では、最初に大学卒業期に甲府市に留まってもらう、あるいは市外の大学に進学した若者に戻ってきてもらうために、いわばインセンティブとして、甲府市内で就職、居住した場合に返還を免除する奨学金制度の創設を提案した。

これには、県で今年度新たに同趣旨の制度を創設するということなのでその状況をみたい、という答弁があった。ただ、こうしたインセンティブな支援策は「2番煎じ」ではたいした効果は見込めない。また、基礎自治体が行うことは市民にとってより身近で使い勝手がいいことが多い。

2点目に触れたのは、市内へ戻ってきてもらうための様々環境整備を行っても、最終的に甲府に戻ってくるかどうかは、必要に迫られて、あるいは仕方なく戻る場合を除けば、「戻りたいという思いの強さ」が決め手となるのではないだろうか、ということである。

裏を返せば、甲府を愛する気持ちの強さであろうし、そのためには人を引き付けてやまない甲府の魅力が自分自身の中に明確に意識されなければならない。

その参考例として、かつて予算委員会でも取り上げたことのある映画「じんじん」のふるさとである、北海道剣淵町の絵本の里づくりを引用した。剣淵町は今夏の会派視察で訪れた町である。

ふるさとを離れた地で居合わせた人に自分のふるさとのまちの名前さえ知られていない、かえって馬鹿にされたという場面に出くわしたとき、多くは反発を覚えるだろう。ここに自分のふるさとへの帰属意識が芽生えるきっかけが生まれる。

(ただそれがふるさとを思うエネルギーへとさらにはふるさとづくりを担っていこうという情熱に昇華するか否かは、結局自分が育ったふるさとにどれほどの魅力を感じているか、あるいは愛着を感じているかという内面的な問題に帰着すると考えている。

我々が人の流れをつくろうといろいろな施策を講じるうえで、我々自身がこうした魅力をどう感じ、とらえているか、を問うことは総合戦略を今後展開していくためにもプライマリーな問題だと感じる。

この観点から、市長の考えを率直に質した。もちろん行政府の長として市政運営の点からの「行政的な」答弁になることは仕方がない。しかし、人の流れを呼び込むために様々甲府市を発信しようとも、自分自身の内にどこに魅力を感じるか、また、これだけは何が何でもすべての人に知ってもらいたい、というものがなければ発信効果は期待できない。

詳細な答弁は後日議事録から正確に伝える予定であるが、この質問で今後のまちづくりの担い手としての方向性の共有がある程度できたのではないか。

少なくともふるさと甲府に対する「愛着」を持った人材が一人でも多く10年後の甲府を見据えたまちづくりにプレーヤーとして登場すること、が成長戦略を実効あるものとするためのカギを握ることが共通理解となったと思っている。

IMG_1260 剣淵町の一風景

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