10月12日、行政視察2日目は福島県郡山市を訪れ、①ホストタウン事業、②市民活動サポートセンター、③市街地再開発ビル「ビッグアイ」、の3項目について調査した。
最初は「ホストタウン事業」である。ホストタウンは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、来日する選手や大会参加国・地域の関係者、日本人選手等と人的・経済的・文化的な相互交流を行う地方公共団体として登録する制度である。
いわば、東京オリンピック・パラリンピックを地域をあげたおもてなしにより成功に導こうとするものであり、また、これをきっかけに更なる交流を図ることによりグローバル化、地域の活性化、観光振興につなげていこうという狙いをもつ。
郡山は明治の時代に、これまで西側にしか流れなかった猪苗代湖からの水を東側の安積原野に引く「安積疏水」建設という難事業に挑んだ開拓者が存在した。
その日本人の代表が大久保利通であり、設計を担当し完成に多大な貢献をしたのがオランダ人技師ファンドールンである。
いうまでもなく時代は戊辰戦争の傷跡がまだ生々しく残り、その復興が大きな課題となっていた時である。まちづくりの情熱に突き動かされた開拓者が立ち上がったことは郡山の未来を方向付ける決定的な出来事だった。
大久保利通は政府の要職にあったが、郡山のこうした開拓者たちの情熱に大きく心を動かされたに違いない。オランダ人技師ファンドールンもこの奇跡ともいうべき安積疏水の成功に欠かすことのできない存在である。
安積疏水が郡山にもたらした恵みは計り知れない。郡山市がファンドールンの出身地オランダのブルメン市と1988年に姉妹都市提携を締結したのは、その功績を永遠にとどめようというものだろう。
今回、オランダをホストタウンの相手国に選定したのは必然の流れだったと思われる。逆に安積疏水が郡山にもたらした大きな恵みに対する郡山市民の感謝の思いがひしひしと伝わってくる。
(‘ホストタウン登録後は、オランダのジャパンマーケットでのPR活動をはじめ、12の交流事業を実施してオランダとの市民レベルの相互理解の深化に努めている。
市では、ホストタウン交流事業を通して得られた成果として、
◯グローバル化の推進として 姉妹都市ブルメン市との交流、異文化理解の促進、語学力の向上をあげている。
〇産業の活性化として オランダの農業技術の導入、民間企業同士の交流
〇地域の活性化として 東京オリパラに向けた機運の醸成、インバウンド観光の促進
〇共生社会の実現として 多言語化の環境整備、バリアフリー・ユニバーサルデザインの理解の促進
ホストタウンについては、これまでの姉妹都市がより強固な結びつきへと脱皮する一つのきっかけともなりうるものであり、郡山市のように恩義から深い関係を築いてきたという歴史的な重みをもつものもあり、それ自体大いに参考となる。