市議会公明党は、8月6日から8日の日程で会派の県外先進事例の視察研修を行った。
視察事例は、横浜市民病院で導入している「パートナーシップ・ナーシング・システム」(PNS)、引きこもり支援を通じた地域福祉の構築で注目されている秋田県藤里町の社会福祉協議会、そして、議会改革のトップランナーとして名高い、会津若松市議会、の3事例である。
第1日目は、横浜市民病院でパートナーシップ・ナーシング・システムについて担当の副看護部長さんからヒアリングを行った。
パートナーシップ・ナーシング・システム(以下PNS)を最初に導入したのは、福井大学付属病院であり、2人の看護師がよきパートナーとして対等な立場で互いの特性を活かし、相互に補完し合う看護方式、とされる。
これまでは、1人の看護師が複数の患者を受け持ち、「自己完結型」で病状観察や記録などを行う方式が一般的であり、看護師の経験年数や急患対応等現場の状況変化によって業務量の差異が顕著に表れる。
そのため、多くの看護現場では早朝出勤、恒常的な超過勤務で疲弊し、インシデントの発生も少なくない状況と言われている。ひとりの看護師に任せるために、状況の把握は往々にして周囲の人間では難しかったり、指導やサポートが行き渡らなかったりといった不都合も指摘されている。折角勤めだしてもすぐ辞めてしまう若い看護師もかなりいるそうである。
PNSはこうした疲弊する看護の現場でのイノベーションとして考案され、今全国の病院で注目されている看護方式である。
横浜市民病院では、年間のパートナーを看護師自身の希望により決定し、毎日の看護ケアをはじめ委員会活動、病棟内の係の仕事に至るまで、1年を通じたパートナーとして、その成果と責任を共有する、としている。
パートナーの決定方式を看護師自身にゆだねることで、経験豊富な看護師も「選ばれる看護師」となるよう日々の緊張感をもって看護にあたるようになり、また、後輩看護師にとっては自己の看護スキルを磨くうえで有用な先輩につくことが可能となるといった、双方にとってメリットのある方式となっている。
しかしながら、導入段階では相当な不平不満が渦巻いていたようだ。2人1組なので、担当患者はこれまでより倍増し、後輩のサポートや指導を合わせて行うことにより先輩看護師の負担感が増した。
後輩看護師にとっても「先輩によってやり方が違うのでやりずらい」などの声も聞かれたようだ。
こうした様々な困難もあったが、疲弊した看護現場を働きやすい環境に変えていくにはPNSしかない、と断固とした意志で導入を進めてきたスタッフは、PNSの目的を丁寧に訴えていった。
パートナーシップといった場合、上下関係ではなく、相互に対等な関係のもとで協調・協働していく事が基本理念であり、それぞれが補完し合う関係であることを強調した。
そのうえで、移行するメリットとして、
①対等な2人が補完し合うことにより、看護サービスの質と安全性、効率性が確保できる ②情報の共有により得られる情報が増え、看護の質が高まる ③互いの知識や技術を補完できる
④タイムリーに相談できる ⑤看護の成果、達成感を共有することでモチベーションがアップする ⑥若手看護師も先輩看護師と一緒に患者を担当することによりOJTの質が向上する
⑦インシデントが減少する ⑧共に学ぶ場となる
「補完し合う」という点が浸透した時に、様々な効果が現れている。特に1人の患者を2人で同時に接することによる業務の分担は、例えば一人が観察してもう一人がその場で記録をPCに入力するということで驚くほど効率的な事務処理が実現した。その結果、事務処理に追われて必然的に超過勤務となっていたこれまでの状況が飛躍的に改善された。
また、複数の目を通すことによるミスの防止は如実に現れた。インシデントの減少ははっきりと実感することができた。若手看護師の離職率も改善されてきた。今後は、市民病院で働きたいという看護師も増えてきたそうである。
病院ではパートナーシップに必要な3要素として、「尊重」「信頼」「慮る」をあげている。
そのうえで、具体的な心の持ちようとして、「自立・自助の心」「与える心」「複眼の心」を徹底している。いずれも対等な立場で補完し合うというパートナーシップ・ナーシング・システムの目的を実現するために求められるものである。
さらに本来の手順通りに実施されているかを検証するために、外部監査を導入し、導入目的を損なわないよう「質を保つ」努力も怠らない。
市立甲府病院でも現在試行病棟がある。一部では、負担増を心配する声もあるやに聞くが、本来の趣旨を正しく理解できれば、そのメリットは計り知れないことに気が付くはずだ。