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会派視察~愛媛県松山市、四国中央市、今治市~(3)

11月21日最終日は今治市のサイクルシティ構想について伺った。

今治市と広島県尾道市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」は全長59.4㎞の西瀬戸自動車道であるが、最大の特徴は「自転車や歩いてでも渡れることができる」よう整備されている点であり、サイクリングロードは、今治市サイクリングターミナル「サンライズ糸山」から尾道港まで約70㎞が整備されている。

瀬戸内に浮かぶ風光明媚な島々の景観を眺めながら走るサイクリングロードは近年世界中からサイクリストを集め、現在30万人を優に超える状況となっている。

今やサイクリストの聖地とまで言われる瀬戸内しまなみ海道の歩みをみると、平成11年度の開通から10年間は試行錯誤の時代とされている。

開通と同時に沿線市町村にレンタサイクル事業が立ち上がり、翌12年度に愛媛県、広島県両県の相互乗り捨ての基本協定が締結され、サイクリングロードの活用を模索していた。

ただし、観光という面での施策展開はまだこれからの状態で、島をつなぐ海道が完成したことによる「別の意味からの」課題に直面し、まさに試行錯誤の状況にあったようだ。

その課題とは、レンタサイクルがほとんど「ママチャリ」であり、「サイクリング」には程遠かったこと、しまなみ海道という大資源を生かし切れていないこと、島が橋でつながったことによる廃止航路の続出と自動車で通過されてしまい、滞留が生まれにくくなったこと、尾道に比べ今治は産業都市で観光という土壌がなかったこと、などしまなみ海道が「観光」という側面で脚光を浴びるところまでは至っていない。

この状況が劇的に急転するのは、開通10周年記念事業をきっかけに「サイクリング」が着目され、翌年愛媛県知事に就任した現中村知事が台湾の世界的自転車メーカーGIANT社のトップとの交流から、知事、今治市長が率先してロードバイク生活を開始したことからである。

平成24年度には、Green World On Wheels ~自転車で世界をつなぐ~「日台交流 瀬戸内しまなみ海道サイクリング」事業が開催され、以後しまなみ海道を使った国際サイクリング大会の開催、愛媛マルゴト自転車道作戦と称しての行政職員、議員等によるしまなみサイクリングの実施、守山市、名護市との自転車を通じたまちづくり交流協定の締結など、しまなみ海道をサイクリングの象徴として活用する多彩な取り組みを行ってきた。

こうした取り組みの進行はやはり愛媛県の力が大きい。愛媛県が「自転車新文化」として「サイクリングが人に健康と生きがいと友情を与える」理念を前面に打ち出し、そこにしまなみ海道が持つ「資源力」を最大限に引き出したこと、そして地元にその魅力の「気づき」を与えたことが大きな要因ととらえられる。

地元の大きな財産というべきしまなみ海道の真の魅力を引き出したそのアプローチは大いに参考となる。重要なことはこれはまちづくりに共通することだが、資源を正しくその魅力を輝かせるのは接する人々の情熱、パッションではないかと改めて思うところである。そして折角の宝が地域にあるのにその価値に気づかないことは最大の不幸である。おそらく「若者 ばか者 よそ者」は地域資源の価値を発見するうえで重要なファクターとなるものを象徴的に表現したものだろう。特に「よそ者」は地元にはない視点から資源にアプローチすることの必要性を端的に表している。

来年のオリンピックでは本県も自転車競技のルートに当たっている。今回の視察を通じて自転車に対する認識が新になった。日常生活に密着したツールがそのまま、まちづくりの一つの資源になりうることに改めてまちづくりが「人の営み」としての奥の深さを示していることを実感させられる。

国土交通省の自転車活用推進本部が日本を代表し、世界に誇ることのできるサイクリングルート(ナショナルサイクルルート)として本年11月に、「つくば霞ケ浦りんりんロード(茨城県)」「ビワイチ(滋賀県大津市)」とともに「しまなみ海道サイクリングロード」を指定したことは、サイクリングが健康と生きがいと友情を生み出すという自転車新文化という考えを今後の方向として位置付けたものではないだろうか。

先般健康都市宣言を行った本市でも具体的な取り組みとして自転車に目を向けてみるのも一法であると思われる。

(資料については「報告・資料」のページに収録してあります。)

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