甲府市議会3月定例会は2月26日召集され、冒頭昨年11月以来取り組んできた、「議会局」設置にかかる条例を議員提案で上程、委員会付託を省略して直ちに採決し、全会一致で可決成立した。
その狙いはいうまでもなく、中核市にふさわしい議会へと、一層の機能充実を図るため、これまでの事務取扱中心から一歩進んで、議員と一体となって政策立案、条例検討など、政策法務を中心とする機関へとグレードアップさせるものである。
当然、名称変更にとどまらず、課を一つ新設して政策法務を所掌する専門官を置くことが中心となる。昨年5月の議長選に事実上の立候補制を導入し、11月の初となる市民との意見交換会を実施し市民意見を起点とした政策づくりの緒についた甲府市議会が、議員自身のスキルアップを図りながら、職員の専門性を最大限に活用し、令和新時代、中核市移行の「ふさわしい」議会へと変貌を遂げる「初めの一歩」となる議会局設置である。
これまでその中心として働いてきた結実が条例可決である。我々の「議論を通じた合意形成」の要としての役割を果し得たと自負している。「時」と「人」。このいずれが欠けても実現しなかったと思う。
さて、3日からの質問戦では、2日目の4日、代表質問に立った。今回もベースに置いたのは4期目に取り組む重点政策である。詳細は後日議事録を基に報告したいが以下概要を記しておく。
1 最初が、「精神保健福祉行政について」である。
昨年4月に中核市移行と同時に設置した甲府市保健所の業務のうち、動物愛護と精神保健福祉行政について一昨年から取り上げて質してきた経緯があり、動物愛護については殺処分ゼロを目指してボランティア団体をつなぐプラットフォームづくり、TNR活動の普及啓発など一定の成果があった。
これに対して、かつて県庁健康増進課時代に精神保健福祉行政を経験しその専門性と困難性がいまだ記憶に残っており、これを基にある意味エールを送るために今回取り上げた。
取り上げた内容は、精神症状の急性期の県との連携、相談体制の状況、そして「ソーシャルインクルージョン」思想の普及についてである。特に3点目はSDGsの「誰一人取り残さない」という基本理念に通じるものであり、多様性に寛容な社会の実現のうえで、その啓発に力を入れるべき考え方である。
2 次に取り上げたのが「サードプレイスづくり」である。
第1の場所である家庭、第2の場所である学校や職場のほかに、居心地のいい第3の場所としての「サードプレイス」は最近ほっと息がつけ、自身をとりもどすことのできる居心地のいい場所として、その効用に注目が集まっている。
「緩やかに交流できる場所」としていわゆる「居場所」として脚光を浴びつつある。これまで取り上げる機会をうかがってきたが、なかなかそのチャンスがなく、今議会で「子ども未来応援条例」が提案されたことにより、子どもの「居場所」という形で取り上げることにした。いずれ今後の取組みのきっかけとなればと考えている。
3 3番目に未婚のひとり親への支援について取り上げた。
ひとり親世帯に対しては寡婦控除という税負担の軽減が認められているが、婚姻歴のない未婚のひとり親に対しては、認められていない。所得税、住民税での軽減はなく、これを基にした保育料、健康保険料も負担軽減は当初制度がなかった。
保育料や健康保険料についてはその後「みなし適用」で軽減を図る自治体が多く出現したが、税負担については法律事項であるため、我が党が毎年与党税制協議で訴え続け、昨年末ようやく未婚のひとり親への寡婦控除の適用が決定した。
同じ子を持つ身なのに、婚姻歴の有無によって不合理な「差別」の状態に置かれていた未婚のひとり親にようやく救いの手が差し伸べられた。こうした状況を制度の周知を含めて今回質した。
4 4点目に、洪水を想定した今後の防災減災対策について質問した。
これまで大地震を想定した防災訓練や避難訓練を毎年行ってきたものの、1000年に一度の豪雨を仮定した場合の洪水ハザードマップの改訂があり、しかもここ何年か集中豪雨や土砂災害、洪水被害が各地で頻発し、特に昨年は台風15号、19号が各地で甚大な被害をもたらしたこともあって、洪水の際の防災・減災のあり方について質した。
市長から次年度洪水想定の訓練を実施するなど、これまでの大地震想定と共に現下の重要課題への対応を明言していただいた。その状況は3月4日付けの地元紙に掲載されている。
5 最後に、第2期人口ビジョンと総合戦略について質問した。
この件についてはすでに登壇した議員から質問がされており、重複を避ける意味で、本来人口ビジョンが地域ごとの目標値の積み上げによるべきだという観点から、地域の特性に応じた戦略の展開という形で質問した。
人口ビジョンがマクロ的に「市全体」の人口数という形で目標値が示されている点は、第1期がこうした視点からつくられていることからやむを得ないとしても、総合戦略に盛り込まれた施策はそれ自体が「まちづくり」そのものであることから、市域を色々な顔を持った「地域」に分け、それぞれの地域ごとの人口目標を示したうえで、当該地域の住民との協働によるまちづくり、言い換えれば、ボトムアップのまちづくりとして提示すべきではなかったかと考える。
策定自体は今回は市の直営ということだが、たぶん第1期の思想や手法が未だ根強かったかという印象を受けた。だから、多くの自治体に共通する「似たり寄ったり感」があるのかとも感じるところである。
今回「重点政策」に基づいていくつか一石を投じる意味で質問した。将来確実な芽をださせるために今後追跡の質問を考えていくが、10年後の甲府市の未来を実現するために今すべきこととしてバックキャスト的に政策を考え、実施に移していくスタイルに一層磨きをかけていかなければならない。