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議会からの政策サイクルについての一考察

3月29日午後から、公益財団法人日本生産性本部のオンラインセミナー【「地方議会評価モデル」の活用法~実質的な議会改革へ一歩踏み出す】に参加させていただいた。

このセミナーは、同本部内の地方議会改革プロジェクトが2016年度以降研究を重ねてきた「議会からの政策サイクル」を今後の議会改革の中心的部分として確立したことを受けて、2019年度には更なる議会改革に向けた起点とすべく成熟度を用いて構築した議会評価モデルについて今後全国展開しようとするものである。

私も研究会のメンバーとして勉強させていただいており、先進議会がはるか前方を走り続けている背中に何とかして追いつこうと自己研鑽を重ね、分権時代に地方議会が果たすべき役割について思いを巡らしてきた。昨年12月には江藤先生はじめ事務局と意見交換をさせていただき、議会評価に関する理解を深めることができた。

議会評価モデルの考え方は、議会のあるべき姿に対して、評価項目を使って「バックキャスト的に」現在どのような状態にあるかを判定することによって、自分の議会が「住民福祉」増進に向けた成熟度がどの位置にあるかを自己診断する際のツールとして使用するとともに、この成熟度という考え方の認知度を広げることによって第3者的な評価としても使える汎用ツール化を目指すものと考えられる。

これまで、議会に対する批判としてよくあげられるのが「議会が何をしているのかわからない」「議会が果たして役に立っているのか」といった、これまで議会の本質的な役割を踏まえた明快な説明が議会側からなされなかったことに起因するものが圧倒的に多かった。

例えば、議会で議決された事項についての明快な説明が果たしてなされてきただろうか。納めた税金が納め甲斐を感じるほど適切に使われただろうかという質問に対して果たして理路整然と説明できただろうか。特に「議会として」の考えを聞かれたときに、それは議長に聞いてくれ、とかたらいまわしにしてこなかっただろうか。

おそらくこうした辛辣な問いかけにこれまであまり遭遇してこなかったと思われるが、評価モデルが今後普及してくれば、先進自治体議会が「政策サイクル」を使って議会の本来の役割を果たし、住民の役に立っている、ということに衆目が集まり、では自分のところの議会はどうだろうか、という問いかけが当然増えてくるだろう。

議会が市民の役に立っている、という評価を市民側から得られれば議会に対する批判や不信は払拭できると考えるが、私はこれを「市民福祉の増進を目指して議会から政策サイクルを回すこと」ができる状態に至れば、市民の役に立っていると考える。議会評価モデルの観点からいえば、「成熟度が高い」状態に達した議会と言い換えることができる。

この「議会からの政策サイクル」が甲府市議会で今後議論すべき重要な論点である。政策サイクルについては、これまでの状況から推察するに、まだ誤解があるように思われる。そこで市民の役に立っている議会といえるための最重要事項である「議会からの政策サイクル」について以下考えを記しておく。

地方制度はいわゆる2元代表制であり、執行機関である首長と議事機関である議会はそれぞれ別個に選挙で選出される。この点で下院の多数派が内閣という行政機関を形成する国の議院内閣制とは決定的に異なる。

地方では首長も議会の構成員である議員もともに選挙で選ばれることから、それぞれが民意を背負って登場してくるが、それぞれが市民福祉増進のために機能的な面での役割を分担しあっている。

首長は執行機関として政策を立案し、これを実行するための事業予算を編成し、執行する。この場合、見落としてはいけないのは制度上当たり前の話だが、議会の「議決」がなければ予算は執行できないのであり、ここに議会も「議決」という行為によって政策執行に関与するのである。政策というのは首長の専権事項では決してない。議会も議決することによって政策を執行しているのである。

この点で議会の機能、役割の重要性が現れる。地方経営では、むしろ議会が重要である、という議論はこの議決を通じた政策執行関与という点をとらえてのことである。このことに先進自治体議会は気がつき、議会からの政策サイクルというシステムを確立した。その慧眼に心から敬意を表したい。

政策サイクルを回すという言葉のイメージから、議会が政策を立案して執行機関に執行してもらいその結果を検証していくということが政策サイクルと誤解されていないだろうか。

もちろん、議会の政策立案を否定するものではないが、2元代表制の役割分担から言えば、議会は議決権による政策執行関与を中心に据えるべきである。具体的には、通常10年スパンで策定する自治体の基本的なまちづくりの指針である、総合計画策定への関与によって政策の方向性を執行機関と共有し、その具体化としての毎年の予算編成に方向付けを行い、予算執行の結果である決算審査によって、課題等を抽出して次の予算に反映していく。この一連のサイクルが議会からの政策サイクルと考えるべきである。議会からの政策提言は新たなニーズが生じたときにこうしたサイクルを補完する意味で実施されるべきである。

こうした考えは、やはり、納税者であり主役である市民にとって、自分たちの税金が政策執行に使われるのであれば、それが適切に使われ成果があがっていることが絶対条件であり、だからこそ納税意欲も失わないという、政治の本来的な役割論から考えれば自然と思われる。

また、執行機関と議事機関という役割の違いはあるにせよ、ともに市民福祉の増進という機関目標は共通であり、政策執行の責任はともに分担し合うべきであることからも、当然と考えられる。執行機関と議会との人的資源、すなわち職員数や様々なノウハウの圧倒的な差を考えれば、このような役割分担は合理的であるし、議会としても構成員である議員の数だけ市民意見を汲み上げるチャンネルがあることから議決を通して政策への多様な市民意見の反映が可能となる。

こうしたことから、議会からの政策サイクルという場合は、当該自治体の政策全般にわたって議会がその立案・執行・検証に主体的に関与することをその内容とすべきと考える。とりわけ政策遂行のための事業予算、及びその検証である決算が日常的な議会活動のなかでは最重要である。なぜなら、総合計画策定段階での関与により政策の方向性を首長とともに定めることから、その執行が適切に行われているかの検証はすなわち政策の具体化である事業執行の検証であり、事業執行はその大部分が予算を伴うものであるゆえ、予算・決算の検証はひいては総合計画に定める政策の検証そのものだからである。

このように、議会からの政策サイクルは決算→予算というサイクルで考えるべきであり、そのためにこれまで決算審査のあり方の見直し、すなわち予算事業が市民福祉の増進にとってどれほど成果があがったかを中心とした審査方法に改め、決算審査で浮かび上がった課題について次年度以降の予算に適切に反映できるようなシステムを考えるべきだという主張を繰り返した次第である。

議会からの政策サイクルが市民福祉の増進のために稼働できる状態になればより市民からの信頼が寄せられるようになるうえ、議会内部での議論の質も向上してくるに違いない。これが議会の「あるべき姿」であり、その実現のために成熟度を用いて適切に議会の現在のレベルを測っていくことが一段と求められると考える。

IMG_1992 韮崎市「わに塚のサクラ」