台風26号は伊豆大島に甚大な被害をもたらした。ニュース映像で流れた土石流の傷跡は改めて防災対策の重要性とその難しさを考えさせられた。
大島は三原山のたび重なる噴火により堆積した火山灰が岩盤にいわば張付いている特有の地盤となっており、24時間で800ミリを超える猛烈な降雨が一斉に土石流を引き起こしたようである。
これほどまでに雨が降ることは思わなかったであろうし、その点が避難勧告を発令することのためらいにつながったのかもしれない。いずれにしても結果として大きな被害が発生したことは痛恨の極みであり、犠牲になられた方へ心からご冥福をお祈りするとともに、被災された方々には心からお見舞いを申し上げたい。
我々は3.11という未曽有の大災害とこれに引き続く原発事故というかって経験したことのない試練に立たされてきた。大災害を乗り越えて再び歩みを進めるためにも、地域コミュニティの重要性が再認識されてきたさなか、毎年のように発生する豪雨被害に対しても改めてコミュニティの持つ力に焦点を当てて対策を講ずべきことが求められていると思う。
諸外国からたびたび称賛されるように、万が一の際の日本人の結束と辛抱強く自分たちで乗り越えようとするエネルギーにはひそかに期待するところである。が、これも普段からの地道なコミュニティづくりが重要なことは言うまでもない。
特にいえば、自立したコミュニティへと普段から意識した取り組みが重要である。より端的にいえば、上からの指示、特に行政からの指示や支援に全面的に依存するのではなく、コミュニティ自体が自律的に行動し対処できるような状態にしていくことが理想的であるし、また今後していかなければならない。
そのためには何と言っても「担い手」が多く登場すること、特に次世代の担い手がコミュニティ内部で着実に育っていくことが何より重要である。これからもこの地域でお互いに関係しあい支え合って暮らしていかなければならないことを考えると、こうした社会資源が地域で有機的に機能していくことが必要である。
しばしば「持続可能な」というフレーズが飛び交う時代にあって、まさに「持続可能な地域コミュニティ」こそが今最も求められる。
そのためには、自分の住む地域への愛着を出発点として、一人一人がコミュニティづくりの主体者であるという意識への転換をさらに進める必要があり、また、一人一人が未来への展望と次世代への責任をより一層意識しつつ、自分にできる範囲で地域活動に関わりを持つことが必要とされる時代だと考える。
生きていく過程では様々なリスク、困難に遭遇せざるを得ない現代である。これを乗り越えていく過去からの偉大な智慧として、再度地域コミュニティの重要性を訴えていきたい。