今夏の参議院選挙から解禁されたウェブサイト等を利用した選挙運動だが、その効果や課題に関する検証については、まだまだこれからの状況にあるように思われる。
4月の公職選挙法の改正後、参議院選挙までの期間が短く、十分な対応ができたとは言い難く、当初、「ネットを使った電子投票」との誤解が一部に見られたように、制度導入の狙いとするところが果たして実現したかについては、疑問を呈する論調も見られる。
今日のインターネットの急速な進展にかんがみ、ネットを利用した「文書図画」の発信や投票依頼などが選挙期間中(公示・告示日から投票日の前日までの期間)にできることとなり、その拡散性に大きな期待が寄せられた。
また、若い世代を中心にフェイスブックやツイッター、ラインといったソーシャルメディアが爆発的に普及し、ネット選挙運動解禁によってこうした若年層の投票行動に大きな影響を与え、結果投票率がアップするのではないか、といった期待も寄せられたことも事実である。
参議院選挙での状況を概観すれば、街頭演説の告知や候補者、政党の考えなど、提供する側、すなわち「選挙の洗礼を受ける側」からの一方通行的な情報発信に終始した感がある。街頭演説の状況の動画発信なども多くみられる中で、各党の公開討論会を主催し、動画配信した大手のネットメディアも散見されたが、総じていえば、「情報発信」という側面が色濃い状況である。
さて、期待された投票率についてはどうであっただろうか。ネット投票行動にどのような動機づけを与えたか。オーソライズされた検証結果はまだ世に出ていない。
特に注目された若い世代の投票行動はどうであっただろうか。興味は尽きない。ネットやソーシャルメディアを縦横無尽に駆使する若い世代が「ネット選挙運動」にふれ、具体的な投票行動を起こしただろうか。詳しい分析がない状況の中で論評することはできないが、今後地方選挙にもネット選挙運動の時代の波が押し寄せられることから、政治と情報発信の関係性やそのあり方、また情報伝達ツールとしてのネット本来の期待される役割について、考察しておく必要がある。
我々地方議員の立場から普段耳にすることが、議員活動が有権者である市民に伝わっていないといった批判、その結果として議会は何をしているのか分からないという厳しい意見に接することが多い。
もちろん、議会の傍聴制度や毎議会ごとの議会だよりの発行、また本会議のCATV放映、さらにはインターネット中継などの公的な「情報発信」はすでに取り組まれている。が、個々の議員の活動はあくまでも個人的にチラシの配布や支援者との対話、街頭演説などによるもので、各議員によって千差万別である。
こうした中で、ネット選挙運動への対応から、ホームページやブログ、また各種ソーシャルメディアの活用が徐々に広がっている。その大きな狙いは何と言っても「情報の提供」である。議員の活動が伝わりにくいという意見への配慮がその根底に横たわっている。
もちろん、こうした動きは議員個人からダイレクトに市民に情報提供するものであるから、市民の理解を深めるうえでは不可欠の取り組みであることに異論はない。
ただし今回の参議院選挙の状況を見た場合、今後に向けた大きな課題が浮かび上がってくる。それは、ネット活用に期待された「双方向性」が必ずしも生かされていない、という点である。
平たく言えば、情報発信側と受け手側との「意見のやり取り」を通じた政策の相互理解が必ずしも十分ではないということである。前に述べた「一方通行」的な情報発信に終始しているというのはこのことを指している。
これまでの選挙運動は、チラシやビラの配布や既存メディアを使った政党や候補者の考え方、政策などの情報提供が主なものであった。有権者側から例えばマニュフェストの内容について突っ込んだ意見を聞きたいとか、候補者本人と直接議論をしたいと思っても不可能な状態に置かれていた。
勢い、与えられた情報の中で比較検討して投票するしかなく、比較検討した結果棄権という選択も少なからずあったものと推測される。そこには必要かつ十分な情報が有権者に提供されたかどうかという不安が常に付きまとう。意図したところが伝わらない可能性すらある。
こうした状況を少しでも改善するために登場したのがネット選挙運動ではなかったか。瞬時に情報を不特定多数に発信することができ、なおかつ双方向的なやりとりが容易にできるネットの特性を生かし切っただろうか。
今後ネット選挙運動が進化することは必然であるが、我々にとって一番気を付けていかなければならないこと。いうまでもなく、発信する情報の「中身」の充実と有権者からの意見のやり取りを容易にし、その意見に応えきっていけるだけの資質の向上である。
ネット活用はあくまでも「ツール」の世界の話である。本質は、情報発信に値する「議員活動そのもの」にあることを忘れてはならない。