先日、飼い主の危機を救った犬の話から、今回の閣議決定で明らかとなった自衛権の行使の限界について考察してみた。
今回は同じ話を通して、閣議決定の「密接な関係を有する」者への攻撃に対する自衛権の行使ができる場合とその最小限度の範囲、さらには、国連の集団的安全保障まで拡げて考察を試みたい。
事案を簡単に紹介すると、クマに襲われた飼い主を守るため、自らの危険を顧みずクマに体当たりして退散させ、飼い主への危険を排除した、というものである。
(‘飼い犬の行為を自衛権行使として認められるか否かを、閣議決定の新3要件に照らして分析し、さらに国連を中心とした安全保障の枠組みになぞらえて捉えてみた。
◆「武力」攻撃の発生
襲われた飼い主はクマから一方的に攻撃を受け、生命に対する「急迫不正の侵害」の明白な危険が発生した。飼い主にはこれまでの解釈から「個別的自衛権」の行使が可能となる。
◆犬のクマへの反撃行為
クマの攻撃は飼い主に向けられ、直接犬に向けられたものではない。これまでの考え方だと、他者への攻撃に対するものだから集団的自衛権に該当し、反撃はできない、と解釈される可能性があった。
しかし、犬は反撃した。この行為を憲法違反だと糾弾できるだろうか?’
確かに、犬は直接攻撃を受けていない。だが、犬にとって飼い主は、極めて「密接な関係にある」存在であり、仮に飼い主の身に何かあれば、その瞬間から食事を与えてくれる存在がいなくなり、犬にとっては「存立を危うくされ、生命等の権利を根底から覆される」危険な状態に陥る。
閣議決定では、こうした場合にも本来の自衛権の行使の範囲としているのである。国際法上は「集団的自衛権」と形式上分類されるものであるが、あくまで「自国」防衛なのである。この点から、これを集団的自衛権の行使容認だと大騒ぎするのは、自衛権の本質を無視した暴論であることがはっきりする。
◆「必要最小限のやむを得ない措置」
犬は、周りに誰もおらず、助けを呼びに行っている間に飼い主がやられてしまう、ということからとっさにクマに体当たりして、クマを撃退した。これは、他にとるべき手段がない状況下でのやむを得ない措置であるといえる。
さらにいえば、クマが退散したことで当面の「明白な危険」が消滅したことにより、犬はそれ以上の反撃行為を行わなかったこと、これが「必要最小限度」の措置であるということができる。
これ以上に、犬が仲間を多数集めてクマに追撃を加える行為は、「明白な危険」が消滅した以上、「必要最小限度」を超える違法な「武力行使」になるだろう。
◆集団安全保障
さて、人を襲ったクマは再び人を襲う可能性があるため、地元でしかるべき機関に依頼して駆除してもらうのが通例である。被害を受けた個人が直接駆除に行くわけではない。
これは言ってみれば、地域の平和と安全な秩序を回復するために、しかるべき機関に駆除(「武力制裁」)の権限を与えることを意味する。いいかえれば、「安保理決議」に基づく「集団安全保障」である。
以上、稚拙な考察を試みたが、この事例が今回の閣議決定をめぐる安全保障論議の理解の一助となれば、と思っている。