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キーワードは「交流」

今「映画「じんじん」のスローシネマ方式による上映運動を甲府市内で始めている。

これまでじんじんの舞台となった、絵本の里北海道剣淵町について取り上げてきた。

人口3,500人の北海道の小さな町に、なぜ年間60万人もの人が訪れるのか。不思議でならなかった。その答えは映画の中に描かれていた。

剣淵町で絵本の読み聞かせをテーマとしたまちづくりに取り組み始めたのは今から4半世紀前のことである。まちづくりを考えるきっかけとなったのは、以前も紹介したが、ある若者が札幌の飲み屋で出身地を聞かれたときに、剣淵町と答えたら、居合わせた客は誰もそんな町が北海道にあるとは知らなかったという。

悔しい思いをした若者が剣淵町に戻って、町のことを日本中に知らしめたい、と仲間とまちづくりに取り組み始めた。

バブル景気に日本中がわいていた当時、まちづくりといえば、ゴルフ場開発やリゾート地開発が定番であった。が、その選択をしなかった。ある東京からきた出版社の編集者の一言。「フランスの田舎の田園風景に似ているこの地に絵本の美術館があったら」

これがヒントとなって、絵本をテーマにしたまちづくりを考え付く。当然、「絵本で町が活性化するわけがない」といった批判が集中した。

ここで挫折しないところに、当時のメンバーの町を愛し、何とか自分たちの手で町を盛り上げて行こうという気概を感じる。

絵本を全戸回覧し、読み聞かせを何度も行った結果、次第に町の人の心も動いてくる。この絵本の読み聞かせが、日常生活の一部として、次第に定着した。しまいには行政をも動かして、世界中の絵本を収蔵する「絵本の館」の建設にまでこぎつける。

そのプロセス、担い手の意識の共有、最後まであきらめない粘り強い取り組み。いずれも「まちづくり」とは何かを教えてくれる。

ここで重要なことは、単に絵本を集め、「ハコモノ」に収蔵するだけの取り組みでは決してないということだ。まちづくりの重要な側面が、そこに住む人々の「営み」にあるとすれば、単なる絵本の収集はまちづくりとは呼べないからだ。

剣淵町が取り組んだのは、日常生活上、当たり前のように行う絵本の「読み聞かせ」である。家庭で、あるいは地域で、親から子へ、仕事帰りの大人から子どもたちへ、読み聞かせを行う。こうした「営み」は、一つの「文化」である。

それは、絵本を通じた「親と子の対話」であり「地域の大人と子どもたちとの対話」である。その結果、何が生まれるか?いうまでもなく対話による「交流」であり、その結果「つながり」が生まれる。ここにキーワードが隠されている。

こうしたつながりの中で育った子どもたちは自然に「豊かな心」が育まれ、また地域の大人たちにも「温かな心」が次第に広がっていったのではないか。「じんじん」には、こうした剣淵町の人々の「温かさ」がさりげなく描かれ、そこに多くの人をひきつけてやまない「秘密」があると思う。

家庭内での交流、地域内での交流がやがて地域外との交流に発展し、また訪れてみたい、という「つながり」を生む。まさに、わが甲府市をはじめ、多くの元気をなくしている地方都市が、豊かさの追求と引き換えに置き去りにしてきた、「大事なもの」を気付かせてくれる。

まちづくりのキーワードは、対話と交流であり、その結果生まれる「つながり」ではないだろうか。人と「ハコモノ」との関係ではなく、人と人との関係をつくっていくことこそ、「右肩下がり」の社会構造の現代で求められるあり方だと強く感じる。

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