藤吉雅春氏の「福井モデル」を読んだ。副題が「未来は地方から始まる」である。
福井、石川、富山の北陸3県は、その昔の幸福度ランキングで常に上位ベストスリーだった。政府統計でもこの3県は生活保護受給率が最も低く、また勤労者世帯の実収入では、福井県はダントツトップである。
さらに、福井県は全国学力テストでここ数年、1位か2位、体力テストでも、1位か2位という驚くべき結果を残している。
「福井モデル」は、こうした北陸3県のその秘密を丁寧に探り、そこに地方にとって何が一番大事で、どこに公共財を集中的に投資すべきかを明らかにしている。
特に感銘を受けたのは、福井の教育である。福井県出身者の東大、京大合格者のうち、驚くほど公立高校出身者が多いという。
そのカギは授業にある。塾に通う割合は極めて低く、逆にいえば、それだけ学校の授業の充実ぶりがうかがえるということだ。
その礎は30年以上前の教育学部で働く4人の若者が創ったという。福井から日本の教育改革をやろうという若き情熱に燃えた彼らが取り組んだのが「教師」を変えていくことだった。
日本の学校の一般的な風景は、1人の先生が黒板の前に立ち、子どもに教え、子どもはノートをとりながら話を聞く。いわば一方的な「知識の伝達」である。時に眠くなることは経験上よくある話である。「面白くない」。学生の頃しばしばそう思ったものである。
福井では、こうした授業ではなく「考える質」を変えていく、課題にぶち当たった時に「知識伝達型」の教育ではもはや対処不可能であり、自分で考えることを身につける教育をベースにしている。
こうした課題意識は、高度経済成長時の右肩上がりの経済からグローバル化による国際競争にさらされ長い不況のトンネルに入った時代に、持続可能な社会を構築するには「新たな価値を生み出す思考法」がもはや不可欠である、ということから出発している。
おそらく、伝統産業が労働力の安い中国や東南アジアに苦境に立たされた経験に基づくものだろう。
そのため、「10年先を見据えた教育」を基本的なベースにおいている。いわば「未来への投資」である。自分でものを考え、答えを出すことのできる「人」を育てようというものである。
そして、こうした点に気付いたのも「人」である。 これから地方創生を考えるにあたって、建物やアクセス道路、あるいはアミューズメントなどに目を奪われるのではなく、「人」を育てることに目を向けるべきである。
どんなにきれいなまちであっても、あるいはどんなにいい制度があっても、そこに「人」がいなければ無意味である。
政治が庶民の幸福の増進のためにあるとするなら、今こそ「人」に焦点をあてた政策にこれまで以上に力を入れるべきではないだろうか。