3期目の当選から1年が経った。この1年は議会においては副議長としての議会運営への参画である。
毎議会での議長と交代での議事進行役、公式行事への出席、各種ヒアリングなど、結構な業務量である。本会議での質問には立てない。また発言も当然のことながら議会を代表する立場からのものでなければならず、しかも議長を飛び越えての発言はできない。
様々な制約が伴い、ある面窮屈な1年であったが、この間多くの書籍をひもとくことができたことは幸いであった。
特に、昨年1年は今後10年間の姿勢運営の基本的指針となる甲府市の第6次総合計画策定の年であり、またいわゆる地方創生法に基づく地方版人口ビジョン、総合戦略の策定の年であったことから、いやがおうでもまちづくりに関する書籍に眼がいった。
日本全体が人口減少局面に差し掛かり、また一昨年のいわゆる「増田レポート」の衝撃的な指摘に多くの自治体がショックを受けるとともに、なにくそという反骨精神を垣間見るが、人口の自然減に加えて、転出人口が転入を圧倒する社会減に、いかなる手を打てばいいか、ということにそれぞれの自治体が頭を悩ましているに違いない。
本市は、2027年のリニア中央新幹線開業と停車駅の設置が決まっており、また開府500年や信玄公生誕500年、市立動物園開園100周年など、ここ数年で新たな歴史の転換点となりうる様々な佳節を迎える。
特に、リニアは、本県にとっても極めて刺激的な、いってみれば閉塞感を打ち破る「救世主」のようにとらえられ、そのメリットを最大限に享受すべく懸命に活用構想を策定中と聞く。
こうした中で、先般、内外情勢調査会月例会でのブランド総合研究所社長の田中章雄氏の講演を聴く機会があった。演題は「山梨県と甲府市のブランド戦略」~地域資源の活用とリニアの可能性を探る~である。
同研究所は全国1,000市区町村と47都道府県を対象とした地域ブランド調査を実施しており、いろいろな項目のランキングを発表しているが、当日は、氏が携わった福井県、三重県(伊勢志摩)の事例を紹介しながら、地域ブランドの確立を中心とした戦略的なまちづくりの取り組みについて講演をいただいた。
福井県は2015年地域ブランド調査で魅力度の伸び率が全国1位。前年の45位から29位に躍進した。県サイドでは当初北陸新幹線の開通に大きな期待を寄せ、その効果になかば「依存」していたと思われる。が、新幹線は金沢どまりで福井までは延伸しなかった。
そこで新幹線に依存しない地域ブランドとして「恐竜王国」の打ち出しを行う。注目を浴びた恐竜博物館を核に西日本方面をターゲットに発信。その際、全国学力テストトップクラスの「教育・子育ての県」としてのイメージ戦略もあわせて展開。若い世代の共感を呼び見事に結果を出していく。
伊勢志摩では、もうすぐ開催されるサミットをきっかけとして、国内外から多数のメディアが取材・報道のため来県することに着目し、こうしたメディアに伊勢志摩の魅力を強力に発信することにより間接的に全世界に伊勢志摩を拡散させる戦略を展開。
具体的には100以上の取材協力店を募集し、「おもてなし隊」を結成し、こうしたメディアが伊勢志摩の魅力を自国に発信してくれることを期待。サミット後に押し寄せるインバウンドの盛り上がりを仕掛けている。
こうした事例を通じてインバウンドにしても移住定住にしても、その地を選び取らせる仕掛けをしていくことの重要性を指摘している。地域資源をいかにして発掘し、これをブランドとしていかに発信していくか、この努力をせずには新幹線が来ようがリニアが来ようが、人の流れは生まれないという、とかく見落としがちな視点を改めて氏は提示している。
これをまちづくりという観点からみれば、よくいわれる「ないものねだりよりもあるもの探し」という右肩下がりの経済状況のもとでの地域づくりの考え方であり、外的な要因への依存を排し主体的に自らのまちを見直し「当事者」としての意識を持つ担い手による地域の再生ということに帰着する。
現在、リニア活用計画が検討されているが、方向性を見誤らないためにも改めて意識すべきは、リニアは単に手段、ツールに過ぎないということ、本体はあくまでも「甲府市の魅力あるまちづくり」にあるということである。
この認識にたたない限り、活用計画も単に駅周辺の開発に終わってしまう結果となる危険があり、甲府に外から人が来ない、逆にストローのように甲府から人が吸い取られる残念な結果となりかねない。
その意味で甲府にとっての地域ブランドの確立、これは早急に手をつけなければならない。それは単にインバウンドを呼び込むための「モノづくり」だけではない。いわゆるソーシャルキャピタル、社会関係資本としてのひとづくり、人の営みといった、カタチとしてとらえにくい資源の発掘にまで及ばなければならない。時は今である。