視察3日目、7月21日午前は剣淵町の絵本の館を視察した。
剣淵町との出会いは2年前の映画「じんじん」を通じてである。以前にも絵本をテーマにしたまちづくりについて紹介したが、今回念願かなって直接話を伺うことができた。
当日は、町長さんと議長さんに最初から最後まで付き合っていただき、予定時間をはるかにオーバーしての視察となった。特に町長さんは絵本のまちづくりを推し進めた当初のメンバーということで思い入れがストレートに伝わってくる。
言うまでもなく、発端は札幌の居酒屋で出身地の話になったときに、居合わせた客が誰も「剣淵町」のことを知らなかったことが、若者の心に火をつけたことだ。
しかし、多くの場合ここで終わってしまう。剣淵町の成功は、この「屈辱」をバネに「自分たちでまちをつくろう」というエネルギーに転化したことだろう。
そこに多くの幸運が舞い込む。士別市在住の銅版画家 小池暢子氏や児童図書編集長 松居友氏らのアドバイスを受け、剣淵の風土に最もフィットする絵本の里づくりに着手する。
だが、以前既に紹介した通り、「絵本でまちがつくれるわけがない」という批判にさらされる。当時はバブル期でまちづくりイコールリゾート開発という考えが蔓延していた時期である。当然の反発だろう
これにめげないのが若者の特権である。印象的なのは、「次の世代への投資」ということを真剣に訴え、次第に町の人々の心を溶かしていったことである。
この剣淵の絵本の里づくりを目の当たりにして感銘を受け、映画の題材にしたのが大地康雄氏であり、できあがった「じんじん」は「スローシネマ方式」という上映したい人が公民館等身近な場所で上映していく方式で今も全国で上映されている。言うまでもなく、ロードショー方式だと映画館のない地域では鑑賞できないことになってしまうからだ。
今回改めて学ばせた点を要約すると、
(1)まちづくりの成否は、いかに自分たちのまちを自分たちの手でつくっていこうというパッションの有無、別の言葉でいえば「当事者意識」が握っていること。
(2)その背景にあるのは自分たちのまち、ふるさとをこよなく愛する意識の共有があること。
(3)目先の得失ではなく、10年先、20年先を見通した取り組みが重要であること。
(4)いかにして、自分たちのまちの魅力を最大限に引き出すか。そのためには自分たちのまちをよく知っていること。
(5)そして、やはり最も重要な点は、自分がまちをつくっていく、という当事者意識に立った「担い手」の存在である。
人口3,000人強の農村がどうして全国から視察が殺到するほどのまちになったのか。そこには十分すぎるほどの理由がある。こういうまちがある限り、決して「地方消滅」などはありえないと改めて実感する。