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会派視察~愛媛県松山市、四国中央市、今治市~(1)

11月19~21日の日程で、標記の自治体の会派視察を行った。テーマは、松山市の「歩いて暮らせるまちづくり」、四国中央市の「デマンドタクシー」、今治市の「サイクルシティ構想」である。

いずれも、人口減少、少子高齢化が進行する本市にあって参考となる事例である。

19日は松山市にて「歩いて暮らせるまちづくり」についてヒアリングさせていただいた。

松山市は、明治22年に愛媛県初の市として発足、当時は松山城を中心とする現在の都心部のみで人口も33,000人弱であった。その後昭和に入って周辺市町村との合併を繰り返し、空港や港などの整備を通じて近代都市へと発展、平成の大合併で四国初の50万都市となった。

最初に現状と課題の説明があり、市街地の拡散と都市機能の流出、中心市街地の活力低下など地方都市に共通する現状が見られるとともに、高齢化の進行、自然環境や都市の個性の喪失も指摘されている。

こうした現状から抽出される課題として、都市部の機能強化、多様な生活ニーズへの対応、自然環境や地球環境の保全、地域資源の保全・活用による地域づくり、の4点があげられた。

その問題意識から、今までと異なるまちづくりを考える必要性を指摘している。その結果、まちづくりをコンパクトで質の高い都市へと方向転換することを決定した。そのメルクマールは、集約型のまちづくりと「遅い交通の」みちづくりである。

歩いて暮らせるまちづくりの取組みはこうして生まれ、推進要綱をみると、①生活の諸機能がコンパクトに集合した暮らしやすい街づくり、②安全・快適で歩いて楽しいバリアフリーの街づくり、③街中に誰もが住める街づくり、④住民との協働作業による永続性のある街づくり、の4つの方向性からまちづくりを進めるとしている。

「遅い交通」という考え方は、「スローライフ」にも通じ、まちづくりの場面ではその価値を再認識する必要があるのではないか。今後の高齢化の進展とまちの魅力を最大限引き出すうえでは、自動車優先から「歩くこと」や自転車交通など遅い交通を重視した道路の整備が重要になってくると考えられる。

こうした「遅い交通」実現のための道路整備はこれまでの自動車優先の考え方を根本的に転換し、より「歩く人」重視の「道路空間再配分」であり、歩いてじっくりまちを堪能するための「まちの魅力づくり」を目指したファサード整備とセットで進められる。(この点はかって本市でもタウンレビューの議論があったことが思い出される)

事例が3つ紹介された。1つ目はロープウェイ通りの整備である。言わずと知れた松山城へのロープウェイを核としたもので、道路整備やファサード整備とあわせて、平成15年にトランジットモールの社会実験を経て整備が実現されている。実際歩いてみると一般車両よりも路面電車、また歩行が中心となって猥雑感がほとんど感じられない。

路面電車は富山市や宇都宮市などの事例を引くまでもなく、コンパクトなまちづくりにとって非常に有用であることが改めて実感される。

(‘その路面電車で道後温泉に向かうと2例目の道後地区の歩行者空間整備がある。

ここでも、観光の中枢資源としての道後温泉本館前を「広場化」し、自動車をシャットアウトして広大な歩行空間を創出した。入り口部分のからくり時計がある道後温泉駅前も時計前を完全に歩行者空間として整備したことにより人の流れが多く生まれている。

これまでの車道に歩道が付属する構造だと、ひとの流れが「線的」で窮屈なイメージだが、車道の導線を大幅に縮小制限し、歩行空間を広場状にすることで、ひとの滞留など「面的」な流れが生まれ、賑わいの創出が可能となっている。この点は、甲府駅南口の広場整備を思い出すが、道後地区は観光資源「道後温泉」の資源力を最大限引き出すための歩行空間整備が強く感じられる。

3つ目の事例は花園町通りの歩行空間整備である。

花園町通りは松山城と松山市駅をつなぐ幹線道路であり、沿線には店舗やオフィスが多数立ち並ぶ。ここも車道を縮小し、イベント開催も可能な歩行空間を拡大する一方で、荷物の積み下ろしスペースもところどころ整備することにより、商業活動との調整を図っている。

計画段階で市民やステークホルダーである商店主などによるワークショップを重ねてきたようであり、市民との協働作業という要綱の要請に忠実に従って、丁寧な合意形成作業を行ってきたようである。

車社会で車道よりも歩道をという主張は多くの場合反発が生まれることは想像に難くない。特に公共交通機関が衰退し移動手段を自家用車に頼らざるを得ない地域ではなおさらである。

そこに、「スローライフ」というパラダイムの転換を進めることが今後益々要請される。特に高齢化進行のスピードが世界でも類を見ない我が国ではこれまでの右肩上がりのシステムをダウンサイズして今後の人口減少社会に見合ったものに変えていかなければシステムが崩壊する恐れがある。

様々な社会資源、観光資源がありながら「滞留」させるための仕掛けをしてこなかったとしたら、まちづくりとしては決して成功とはいえない。人の営みこそがまちづくりの核としたら、立ち止まってじっくり眺めてもらうことはまちの新たな魅力発見につながるのではないか。

車で通り過ぎるだけではその価値を見ることはできない。いかに立ち止まらせるか。それはまちの魅力をみせることであり、そのための歩行空間の創出である。

歩いて暮らせるまちづくりは、高齢化社会での時代に即した生活空間の再構築であり、一方でまちの魅力を「立ち止まって」堪能するための仕掛けである。
(資料については「報告・資料」のページに収録)

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