今年も残り僅かとなり、議長就任から約半年が過ぎようとしている。議会基本条例制定に向けて特別委員会の議論が進み、議長就任時の「公約」が実現に向けて動き出している。
議会基本条例を甲府市議会がこの時点で制定する意義は、中核市として今後一層の市民生活向上に向けた行政経営が要請されているなかで、2元的代表制の地方議会が議決権を背景とした行政執行への関与という本来の機能を明確に規定し、徹底的に議論し合うことを定着させることによって、議会も市民のために役に立っているという評価につなげようという点にある。
議会基本条例は議会が機関としての機能を果たすための基盤を法規範として規定したものであり、それ自体が目的ではない。重要なことはあくまで、条例によって整備された「議論し合う」という基盤をもとに、いかに「市民福祉の増進のための」議論をし、行政執行を監視し、さらに見落としがちな視点からの政策提案ができるか、である。
その意味で議長就任時の公約に、予算・決算審査における事務事業評価を導入することによる審査機能の充実を図ることを掲げたのは、市民にとっては、納めた税金がどのように使われ、市民福祉増進にどのような成果があがったかが最大の関心事であり、これを検証することが議会にまず求められることだからである。
予算・決算を議会の立場からみると、議会が議決を与えた予算が議決の目的どおりに執行され、成果をあげたかを審査するのが決算である。執行状況を見て改善点があれば次の予算に反映させるべきであり、成果があがらなければ廃止等も検討すべきである。
市民の代表である議会による決算審査を通じて本来スクラップアンドビルドの議論をするのが代議制民主主義の本旨である。議会が市民の役に立っているといえるために決算審査は極めて重要である。
首長の行政運営は、総合計画により10年後の都市像を目標に毎年計画的に施策事業を実施し、個々の施策事業は毎年の予算によって裏打ちされている。総合計画策定への議会の関与は議決事項に加えることにより可能となるが、毎年の予算の議決は総合計画の実行に議会が具体的に関与することを意味し、決算審査はその執行の適正と成果を検証して必要な改善を図っていくという予算・決算の有機的なサイクルの確立を意味する。
決算審査の肝が「成果の検証」にあるとするならば、これまでの審査のあり方を根本から見直す必要がある。予算調製権は首長の専権事項に属し、自治法上予算は目的別に「款項」に区分して議会の議決を得ることとなっている。
予算書は「款項目節」ごとに分類され議会に提出されるが、実際は個々の「目」はいくつかの「事務事業」によって構成されている。事務事業は議決の対象ではないが、予算が妥当か否か、またこれと連動する決算が妥当か否かを審査するためには、実はこの事務事業までを審査しなければ妥当な結論が得られないことが多い。
しかも決算審査で事業執行の成果を検証するためには、どうしても事務事業の成果測定に行き着かざるをえない。これまでの決算の審査は成果の検証という点からは不十分であったことは否めない。1つの「款」について審査する場合に、その執行によって市民生活にどの程度の好影響が生じたかどうか、という視点からの審査が行われてきたか、といえば必ずしもそうではない。
これは、審査の基準、審査の方法が定められていないことに起因するが、議会が市民福祉増進のための機関であるとするならば、決して看過することはできない。だからこそ議長就任を通じて決算・予算の審査のあり方について、成果検証の視点からの見直しについて問題提起をしたものである。現在議会基本条例特別委員会の議論に委ねられているが、議会の機能充実の見地からも重要な課題である。
常に意識すべきことは、議会が市民の役に立っているか、という自省であり、その点にこそ議会改革といわれるものの中身がある。