13日開会の甲府市議会6月定例会の中心的議題は、樋口市長の3期目の公約を具現化した行政計画「NEXT ACTION」に基づく政策予算についてである。3月定例会では翌年度の当初予算を「フルスペック」で計上し議会に提案するのが通例であるが、議会改選期では、骨格予算として編成し、改選後の新構成となった議会に肉付けする内容の政策的経費を補正予算として提案する方式がとられている。改選後の議会で市長の政策についての議論を行う意味からこうした対応がとられる。
本日22日までに各常任委員会で補正予算について審議し、最終日の26日に本会議で採決する運びとなっている。
このほかに、ほぼ毎議会、請願が提出され、それぞれ所管の常任委員会で審査され、採択、不採択の審査結果となった案件については、最終日に本会議で討論、採決という流れとなる。その内容は大部分が地方自治法第99条による国への意見書提出を求めるものとなっている。なかには防衛・外交といった、国権の最高機関である国会で議論すべき案件もあり、その対応にはなかなかエネルギーを使い、それぞれ所属の国会議員がいるのだから、そのルートで国会での議論の俎上にのせた方がいいのでは、と感じる案件が多い。憲法で保護されている請願権という観点から甲府市議会基本条例でも請願を「政策提言ととらえ」と規定しているが、もう少し整理の必要があるのではないか。
そもそも地方議会は本来地方固有の課題をもっと議論すべきであって、国政にかかる問題に議会を二分して議論のエネルギーを傾けても得るものはそれほど多くない。むしろ、国と地方の役割分担をしっかりと押さえて、地方は住民福祉の向上に直結する課題解決にこそエネルギーを傾注すべきである。
今回も核兵器禁止条約の署名・批准を政府に求める意見書を甲府市議会から政府に提出するよう求める請願が提出された。毎回団体名を変えているが、内容はほぼ同一である。これでたしか3回目の提出となる。
前任期スタート時の令和元年6月定例会に同趣旨の請願が甲府市議会に提出され、その時は継続審議となった。本市が昭和57年に核兵器廃絶平和都市宣言を行っていることから、当時の議長が国際情勢に即した内容の核廃絶に向けた取り組みを考えるべきという意向を示して、その時の副議長が我が会派からの女性議員であったこともあり、議会発の意見書のたたき台作成の任を私が請け負った。
当時、核兵器禁止条約が国連で採択されたが、非保有国に署名等の動きが広がっているものの核保有国は一つとして参加しておらず、その間の溝がかえって深まりつつある、という状況であった。そのため、我が国は唯一の戦争被爆国という他にはない立場から保有国、非保有国の対話の「橋渡し」の役割を担うべきだという核廃絶に向けた現実的な取り組みを強調した意見書をつくり上げた。
むろん、条約の有用性そのものを否定してはおらず、将来環境が整えば批准すべきという含みを残したものである。その真意は我が国が賢人会議や条約締結国会議へのオブザーバー参加、NPT(核不拡散条約)の推進など、保有国を何とかテーブルにつかせる現実的な取り組みをしてこそ核廃絶につながるというごく当たり前の考えである。
注意しなければならないのは、政治目的からの宣伝行為に利用されないようにである。条約批准は核廃絶という目的達成のための「手段」であるはずなのに、いつのまにか批准自体が目的化していないか。いわゆる手段と目的の転倒、とか手段の目的化という本末転倒の状態にならないよう、本質を見極めなければならない。
こうして令和2年3月に甲府市議会から政府に対して核廃絶に向けた一層の取組みを求める意見書が「全会一致」で議決された。その次の定例会で、継続審議となっていた請願について、意見書が議決されたことをもって不採択の決定をした。これで、今後は条約への署名・批准を求める請願に関しては決着したと思っていたが、昨年3月に内容同一の請願が署名とともに提出され、結果不採択となった。
市議会の意見書に照らし、特別の事情の変化もないことから当然の判断だったが、市議会意見書に賛成した議員の一部が紹介議員となるという理解しがたい事態となった。紹介議員となった理由が、「意見書の内容に署名・批准が抜け落ちているから」という噴飯物の理由である。
意見書を議決した際には、すでに条約への署名・批准を求める請願が継続審査となって議会に届いており、その存在を熟知していたはずで、そのうえで署名・批准よりも対話の橋渡しをすべしという意見書に賛成したはずである。仮に署名・批准が抜けているというのなら、その時点でなぜ反対しなかったのか。結局単なる政治利用だったようで断じて非難すべきである。
今回改選後の甲府市議会にまたも団体名を変えて同趣旨の請願が出されてきた。驚くべきは、いつもの反対メンバー議員のほかに、現在の第一会派所属議員全員が紹介議員となっていることだ。第一会派は全員が自民党系の議員だと思っていたが、その議員が請願書の内容に「願意妥当」として紹介議員となっていることに、耳を疑った。
請願書は、ロシアによるウクライナ侵攻にふれ、また、世界の軍事費が過去最高を記録して、日本もまた大規模な軍拡が始まった、という看過できない表現がある。こうして軍拡競争がエスカレートすればやがて日本が戦場になる、という化石に近いロジックを展開し、だから、核兵器禁止条約への署名・批准を求める、という理解不能の内容である。問題は、日本もまた大規模な軍拡が始まった、という表現である。これを自民党系の議員が願意妥当として紹介議員になるとは、もはや発する言葉がない。大規模な軍拡が始まったというならば、現内閣に事実関係を質すべきである。
核保有国による核使用の威嚇等があるから、日本が核禁止条約に署名・批准すべし、という理屈も全くおかしい。そんなことなら、核を持たない我が国にいうのではなく、威嚇している当該核保有国に核禁止条約への署名・批准を迫るべきである。まったく論理破綻しているとしか言いようがない。
26日の最終日には、連立与党の一角を担う責任政党の公明党として、反対討論に立つことを余儀なくされた。その主張の柱は次のとおりである。これまでの議決を行った議員として、これは説明する責任があるゆえである。意見書に全会一致で賛成した議員についても最低限の説明責任を果たすべきことを申し添える。
(1)誤解のないようにあらかじめ申し上げるが、我々は同条約の有用性を否定するものではなく、環境が整えば将来的に批准すべきと考えている。
(2)核保有国が一つとして参加していない現状では、非保有国との間の分断が広がっており、唯一の被爆国である我が国こそが両者間の溝を埋めるべく「対話の橋渡し」の役割を担うべきである。
(3)核廃絶を目的とするなら、核保有国が核廃棄というアクションを起こすことが絶対条件であることから、核保有国を巻き込むアプローチが不可欠である。
(4)今ここで日本が単独で署名・批准するより、核保有国と同時に署名・批准する「同時履行」が最善策である。
(5)こうした核保有国へのアプローチに言及していない請願にはその限りで賛同できない。
紹介議員数をみると過半数ゆえ、採択される可能性が高いが、令和2年3月意見書の起草者として正々堂々の主張をする予定である。
おそらくその後の議事日程で請願に沿った内容の意見書案が議員提案で出てくるが、その際には、さらに、(1)今すぐ署名・批准しなければならない事情があるのか、(2)署名・批准さえすれば保有国への廃絶に向けたアプローチは必要ないと考えているのか、(3)令和2年3月意見書と180度違う内容となるが、前の意見書を撤回する手続きをとらなければおかしい、という内容を提案者に問いただす予定である。
議会人として、自分のとった行動、特に表決行動については、なぜそのような行動をとったかを説明する責任があり、その場その場で態度がころころ変わるようなことは、あるまじき振舞ということを26日の最終日を前に申し上げておきたい。