10月24日視察初日の午後は、八王子市から宇都宮市に移動し、カーボンニュートラルの取組みについて視察した。
宇都宮市といえば今年夏に念願のLRTが開通し、大きな話題となったことが記憶に新しい。公共交通として整備することによるマイカー利用の抑制とこれによる排気ガスの削減につなげる狙いがあることは言うまでもない。以前に総務委員会で視察の訪れたこともあり、当時もLRTを基軸とした交通ネットワークの構築といくつかのコンパクトな拠点を公共交通システムでつなぐことによる「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」の実現による「スーパースマートシティ」を目指すまち、という説明をお聞きし、新鮮な感動を覚えた記憶がある。
このネットワーク型コンパクトシティを土台として、「地域経済循環社会」「地域共生社会」「脱炭素社会」の3つの社会が「人」づくりの取組みや「デジタル」技術の活用によって発展する、という未来図を描いている。
このうち、脱炭素に向けては、2050年にカーボンゼロを目指すことを宣言し(2021年9月)、市長を本部長とする「宇都宮市カーボンニュートラル推進本部」を設置(2021年11月)、「宇都宮カーボンニュートラルロードマップ」を策定(2022年9月)している。
とともに、新たな温室効果ガス削減目標として、2030年度までに、2013年度比50%削減を設定し、市民、事業者、行政の各主体が「我が事」として取り組むために、主体別の削減目標も設定している。この点は、おおいに参考になる。要は何をすべきかを具体的かつ明確に示すことにより、取組みの方向がはっきりするからである。
このロードマップでは、カーボンニュートラル実現のための3つのアクションとして、1大胆に「かえる」、2もっと「つくる」、3みんなで「育てる」を掲げ、脱炭素に向けて行動変容を促し、環境負荷の少ない再生化のエネルギーをつくり、市の資源であるNCC、人材、緑、技術、パートナーシップなどをさらに育てる、という方向性を打ち出している。
脱炭素化を加速させるきっかけづくりとして、市では、LRTの整備を契機として、その沿線をモデルエリアとした低炭素化策を構築し、効果等を検証してその仕組みを市域全体に広げていくこととしている。具体的には、①トランジットセンターでの再エネ設備の導入、②トランジットセンター周辺街区への再エネ設備導入、③端末交通においてのEVバス、電動キックボード、シェアサイクルなどの導入促進、④モーダルシフト(貨客混載)の促進、⑤地域新電力の設立、である。
このうち、注目は地域新電力として設立された「宇都宮ライトパワー(株)」である。これは、宇都宮市が51%を出資、NTTや東京ガス、地元銀行2行も参加した、電力調達と電力小売りを行う株式会社である。電力調達元は、ごみ処理施設グリーンパーク茂原及び一般家庭の太陽光発電であり、いずれも電力買い取り制度期間終了のものを買い上げる。これを市有施設やLRTに供給する。家庭用太陽光発電の導入率は中核市で1位の実績があり、買い取り制度の期間満了後にライトパワー(株)で買い上げることにより双方にメリットが生ずる。現状の資源を最大限活用することにより、LRTも「ゼロカーボン・トランスポート」というブランドを創ることが出来、また、市有施設の電力料金の削減、ごみ処理施設の売電収入も会社が買い上げることにより増加するなどの効果や、一般家庭での太陽光発電の維持などの効果が期待できる。
宇都宮市では、脱炭素社会が求められる時代に長年の悲願であったLRTが開業することをうまくとらえ、その環境負荷軽減のイメージを軸に具体的なカーボンニュートラルの取組みを示しており、非常にわかりやすく、かつ効果が期待出来る内容となっている。キーワードはここでもいかに「自分事」として取組みに向かわせるか、である。