12月16日午後3時から、江藤俊昭山梨学院大教授を座長とする公益財団法人日本生産性本部「地方議会改革プロジェクト」との意見交換を行った。
日本生産性本部は、そのHPで紹介されている通り「1955年3月の設立以来、経済界・労働界・学識者の三者が参画する生産性運動の中核組織として、戦後の日本経済の復興とその後の高度経済成長に大きな役割を果たして」きており、その理念のもと、地方自治の分野においても政策サイクル確立を核とする地方議会改革について、江藤先生を座長として研究を進めている。
前任期の中途から研究会の会合に参加させていただいており、議会改革のトップランナーの議会の状況を間近に見ることが出来たことは、これまでの自分自身の3期12年にわたる甲府市議会での経験に照らし合わせながら、現在の甲府市議会の改革論議に大きな理論的バックボーンとなっていることは間違いない。別の言葉でいえば、この生産性本部のプロジェクトに参加していなかったらおそらく昨年からの甲府市議会の改革に向けた具体的なアクションは実現できなかったといっても過言ではない。
現在当プロジェクトでは、「議会評価モデル」を使ってそれぞれの議会が理想的な姿からみて「どのような状態にあるか」を診断し、いわゆる議会改革に向けて最低限今後何をすべきかをそれぞれの議会が「気づく」きっかけづくりを進めている。
北海道栗山町が初めて議会基本条例を制定して以降10年余のうちに基本条例を制定する自治体議会は1000団体に届く状況となっており、近年では「条例を使ってどのような議会活動をするか」という実質的な内容に議論の焦点が移っている。
執行機関のチェックを中心とするこれまでの伝統的な考えは当然のこと、議会もその構成員である議員が直接選挙で選ばれている以上、首長と同じく「民意」を背景にしていることから、住民のために、という視点からの機能をより果たすべきであり、具体的には住民意見を起点とする「決算審査から予算への反映」という「議会からの」執行管理(一般的に言うPDCAサイクルに近いもの)や議会からの政策提案という、執行権を持たないが議決権を持つ議会の機関的特性に着目して、地方自治を実質ならしめようというものである。
江藤先生の「議会基本条例制定の第1ステージ」「議会からの政策サイクル確立の第2ステージ」を踏まえて、今回議会評価モデルを使った「自己診断」を個人的にやってみて、気づいた点を生産性本部に直言したところ、直接意見交換したいとのことで今回の機会となった。
現在1000近い自治体で議会基本条例が制定済といっても、圧倒的に多くの自治体議会では制定には至っておらず、また、議員間討議や住民との意見交換会といった、「議会改革」といわれる議会活動の実現には至っていない。
甲府市議会もまさにこれら圧倒的多数の「これから改革を行う」進行形の議会である。これまでの「未来形」から「現在進行形」へとようやく一歩ステップアップした状況である。この立ち位置から、今回の議会評価モデルが我々と同じくこれからの議会にとって使い勝手の良いものにしていくために甲府市議会の使命は重要と考え、色々課題提起させていただいている。
マニュフェスト大賞や議会改革度ランキングなど、現在議会改革の取組みを「顕彰」する制度が注目を集めており、議会改革の取組みとはどのようなものかをある程度分かりやすく見える化している。
改革度が上がることに一喜一憂する議会も多いと思われるが、実は問題はそう簡単ではない。納税者である有権者の厳しい目からは「で、我々にどれくらい役に立っているの?」という辛辣な質問を浴びせられたときに、果たしてどこまで納得を得られる答えを返せるか、疑問なしとしない。
重要な視点は、議会が「住民福祉の増進のために」どのような活動をしているか、である。「議会改革」というのは中央集権時代に出来上がった制度を地方分権時代に即した制度に改善し、この住民福祉の増進のための活動を行えるようにするための「機能充実」の取組みである。
住民福祉の増進という基本的な視点を欠いた取組みは決して改革ではない。この視点から議会のあるべき姿をまず共有すべきことを生産性本部に訴えた。具体的には次のとおりである。
議会は(1)「住民福祉の増進」を目的とした、(2)合議制の、(3)機関 であること。これがあるべき姿であり、その実現のための取組みをバックキャスト的に考える必要がある。その際のツールとして生産性本部の評価モデルが有効である。
議会のあるべき姿にどのくらい近づいているか、を評価項目(具体的な取り組み目標といってもよい)に沿って「成熟度」で表現し、成熟度が高い議会ほど住民に役に立っている議会という説明をしていこうと考える。
(1)の住民福祉の増進を目的とすることから、「住民との意見交換会」により議会が直接その意見を把握し、これを起点として決算→予算のサイクルを回すという「住民との意見交換会」の意義づけが明確となる。
(2)の「合議制」は言うまでもなく選挙で選ばれて議会に登場する議員は多様な民意を背負っている以上、その多様な意見を「合議」(話し合い)により調整していくことが代議制民主主義の本旨であることの当然の帰結である。このことを「議論を通じた合意形成」という表現でこれまで内外に訴えてきたところであり、いわゆる「議員間討議」の制度はこの意味からマストの制度である。「多様性」を認めつつ、一定の方向性を見出すことが求められる政治の世界ではこの「議論による」という要請は極めて重要である。
(3)の「機関性」は首長が執行「機関」であることと対をなす議事「機関」ということであり、首長の行政執行のチェックや政策提案も基本的には「機関」として行うことを指している。例えば首長から提出される議案に対しては議会が「機関」として意見集約して答えを返す(議決)のであり、決して個々の議員が個別に答えを返すのではない。この点がこれまであまり意識されなかったため、例えば決算委員会等で個々の議員の研究発表的なやり取りに終始し、「機関」としての意見集約がなされてこなかった。これは制度の欠陥ということも要因として存在する。
当日の生産性本部との意見交換会は同じ悩みを持つ全国の議会への有効なメッセージとなりうると自負しており、議会改革をもう一度原点に立ち返って「実質ならしめる」ため今後も微力ながら全力で取り組もうと決意を新たにしている。